クリスマスSS ジプシー



ちっス!



どもっス、スフィンクスです。

エジプトで観光名所なんてやってます。
ほら、ギザのピラミッド前でよく写真とられてるでしょ?
あれ俺。
俺なんスよ。へへっ、恐縮でっス。

身長70メートル。座高が20メートルくらい?
身体ライオン系。
まあまあなスタイルっしょ?
スフィ界じゃ結構モテるんスよ。
恐縮でっス。
あ、でも最近ダメっすわ~。
女の子とか全然ノッてきませんもん~。
やっぱ鼻とか欠けちゃうとダメなんスかね~ほんと~。

職業スか?
まあ最近はぁ、よく写真とか撮られたりしてぇ、モデルみたいなことしてるんスけどぉ。
本来は神獣なんスよ。
はい、神様のペット。
まあペットとはいうけど~、俺も俺なりのポリシー持ってやってるんでぇ、やっぱペットよりは神獣っつって欲しいっスね。


あ、そうそう。
なんかぁ、いま日本、クリスマスだそうじゃないスか。

え? 全世界的にそう?
あれ、時差とかどうなってんスかね。俺だいたいエジプトなんでよく知らねんスけど。

まあとにかく、そのクリスマスね。
俺がはやらしたんスよ。
あ、いえ。あの~、ツリーのほう。
ツリー飾るの流行らしたの、俺なんス。
えへへへ恐縮でっス。

なんかぁ、最初はぁ、冬至っつんスか?
お日様が昇る時間が短いっつってぇ、人間ども泣いてっからぁ、
俺そういうの見逃せないんでぇ、
なんか~、葉っぱ飾ったらって言ってやったんスよ。
ほら、フェスタ的な?
太陽呼ぶんぞ的な?
したらそれが流行っちゃってぇ、クリスマスツリーとかいってぇ、
全世界的に? やるようになったんスよ。

でぇへへへへへ。
いや~そんな気なかったんスけどね~。
ほんと。ほんとちょぉっと言ってみただけなんスけど。
へへっ。恐縮でっス。


あ、そうそう仕事でしたね。
神獣っつても遊んでるわけじゃないんスよ。

ここに来た人にね、なぞなぞ出すんスよ。
んで正解したら富を与えて、まちがえたら食っちゃうわけです。

種類は色々だけど、最近はこんな感じ。

「天国と地獄に通じる道がある。道の前には正直な番人と嘘つきな番人がいる。番人には一度だけ質問が出来る。さて、確実に天国に行くにはどうすべきか」ってやつ。
正直系は真実しか言わないし、
嘘つき系は嘘しか付きません。

ちなみに正解は
「天国はどっちですか」ですよ。
こういえば、どっち系にしろ、答えを教えてくれるわけです。

いや答え言ったって神様に言わないでくださいよ~。
あの人怖いんスよ~、

でも俺もう最近人間食い飽きててぇ、
ほら、メタボ? やたら脂っこいじゃないスか。
あれキツいんスよ……。
あ、いや全然食えますけどね? 年とかじゃ全然ないんスけどぉ。

まあとにかく、そんな感じの仕事させてもらってまっス。


さて。
今日はどんな旅人捕まえちゃおっかな~。


          ☆           ☆


『……』

でぇ、ひとり連れてきたんスけどぉ。
あ、一人じゃねーや。
人間じゃないんでぇ、あの……一匹?

番人 「それを言うなら一頭ですご主人」
番人 「一匹であってますよご主人」

あ、一頭っつーんスか。そスか。
あれ、なんつーんでしたっけ。
なんか、角が生えてて、茶色くて。鼻が赤くて。
鹿? 鹿?

番人 「あれはトナカイですご主人。しかしなぜ鼻が赤いのでしょう」
番人 「あれは鹿ですご主人。鼻も青いようです」

あー、トナカイねー。知ってる知ってる。
つか嘘つき系うるせぇ! ちょっと黙っててくださいよ~。

嘘つきな番人 「分かりました。嘘つきな番人は黙ります」

分かりゃいいんスけどぉ、

嘘つきな番人 「はいたいへん申し訳なく思います嘘つきは番人は黙ります。私は本来しゃべるのがあまり得意ではないですし、黙っているのが大好きです。尊敬するご主人の言うことなら何でも従わねばと思いますので黙るのは当然のことです。黙ります黙りますいますぐ黙ります本当にもう二度と口を開かないくらいの」

うるせぇ!


『あの~』

あ、どもトナカイさん。

『はいどうも』

へ~、人語上手なんスね。

『あはは、ありがとうございます』
『もう何千年もご主人様に飼っていただいているので覚えました』

いいじゃないスか。べしゃりが上手いっていいことっスよ。
コミュニケーションって大切ですしね~。
赤い鼻もチャーミングですし。

『どうも』
『これコンプレックスなんで。そう言っていただけると嬉しいですね』

いいじゃないスか赤い鼻~。
俺なんてぇ、かーなーりー前から鼻ないんスよ。

まあいいや。
あの~、来た理由、分かります?

『いえ、皆目見当が』
『というか、返していただけませんかね。今日は一年で一番忙しい日なんです』
『僕がいないとご主人様が仕事できなくて、世界中の子供が泣いちゃうなんてことに』

そうスか。
いやサーセン、でも帰るのちょっと待ってくださいね。
これからこっち、なぞなぞ出しましてぇ。
それに正解できたら帰ってもらう。ってルールなんスよ。
あ、これ神様が決めたんで文句なら神様に。

『え~。……よりによってこんな日に』
『あの、ちなみに間違えたら?』

食います。
僕が。
むしゃむしゃと。

『ひぃ!』

えへへいや~サーセン。
これも神様が決めたルールなんでぇ。
いや僕は本当は嫌なんですよ。
ほんとに。
もうほんとに。

『……』

……鹿肉久しぶりとか思ってないっすよ。
身体がライオン系なんで、めっちゃ腹減ってきましたけど。
でも内心は嫌なんスよ。

『助けてー、ご主人様ー』

あははっ、まあまあ。
正解すりゃ普通に帰しますって。
お腹は適当にインパラとか食いますし。

『はぁ、そうですか』
『……』

じゃあ問題出しますね。パパッと答えちゃってください。

えっとぉ、そこにいる番人。片方に1回だけ質問できるってのが
一番大事なルールです。
んでぇ、こいつら癖があるっつか、己を曲げないっつか。
質問に対して答え方のルールが……。

『はぁ……』

……。

あの、説明途中にため息とか。
こっちもテンションバリ下がりなんスけど。

『あ……すいません。どうも』
『はぁ……』

なんかあったんスか?
さっきから浮かない顔してますよ。
あ、鹿さんの浮かない顔とか神獣なら分かるんスけどぉ。

『いえ』
『私なんかもう、食べられちゃってもいいかなぁって』

マジスか!?
ンじゃ丸呑みにします! 全然痛いとか感じさせないで
ペロっといきますんで。もう全然任せてくれていい感じで……。

番人「……」
番人「……」

……。

なにがあったんスか鹿さん。
悩み事あるなら相談乗りますよ。
ほら、こっち一応神の使いですし。

『いえ、なにってことはないんです』

『ただね、私、もう全体的に必要とされてないんですよ』

さっきご主人様がどうとか言ってませんでした?

『はい、ご主人様は必要としてくださいます』
『ただご主人様の働くべき今日、クリスマスという日が、もうご主人様を必要としてない気がするんですよ』

はぁ、ちょっとよく分かんないスけど。

『今日は世界中が感謝で包まれる日』
『そう教えられ、そう信じて私はやってきました』

『しかし最近は、そうは思わない人が増えているようです』
『クリスマスを嫌う人』
『たんなる稼ぎ時としか見ない人』
『ただ騒ぎたいだけの人』

『ご主人様はそんな日のために一生懸命働いています』
『誰かから届いたプレゼント。それを喜び、感謝する気持ちを忘れないように、と』

『……なんの意味があるのかと思いまして』
『だったらもう私がいなくなれば、ご主人様はお出かけになれないわけですし』
『大変な思いをなさることはないのかと……』
『……』

……。

暗いなぁ。

自分、こういう空気苦手なんスけど。


『……』

……あの。

『あ、はい。そうでした。質問でしたっけ?』

そうなんですけど。んでなぞなぞってのがですね、

『あのぅ』

番人 「はい」

『あなたはどう思います?』
『このままご主人様が働いて、意味があると思います?』
『今日は本当に、世界中が感謝で包まれる日だと』
『誰かから届くプレゼントに、誰かは感謝するものだと思います?』

番人 「……」


……。


『……』



番人 「はい」




          ☆           ☆


「おうコラ赤っ鼻ァ! いつまで油売ってやがる!」

え!?

「ったく、いねーと思ったらなんでこんな暑ちぃところに」
「この服いろんなとこがもこもこしてて蒸れるんだぞバーロィ」

ちょちょちょちょっと待った!

ジイさん誰っスか! 入ってこないでくださいよ!
いまこっち仕事してるんスから。

「ああ? なんだてめー、ヘンテコな顔しやがって」

ヘンテコな顔はお互いさまスよ。なんつーヒゲしてんスか。

「うっせぇ。こっちは1000年以上前からこのヒゲでやってんだ」
「ポリシーなんだよ」

だったらこっちだって2000年以上前からこの顔っスよ。
つかほんとにあなた誰です……酒くさ!
飲んでるんスかジイさん?

「おう飲んでるよ。わりーか」
「? ひっくい鼻だなオイ」

!!!
は! ははは、鼻が低いの関係ないでしょう!

誰スかあんた! こっち一応神様の使いっスよ!

「知るかバーローめ」
「コルァ、赤鼻。てめーなに遊んでやがんだ」
『ご、ご主人。どうしてここに』
「てめーがいつまで経っても手伝わねーから探しにきたんだろが!」
『うう、すいませんご主人』

「ったく、おら帰るぞ。時間がねーんだから」
『はい……うわっと! ご主人、背中にのらないで。私の仕事はそりを引くことなんだから』
「いいから早く飛べや!」
『は、はい……』

あーっ! ちょっとー!


……行っちゃった。

なんだったんだよ一体。
久しぶりに鹿肉だったのに……。

まったく。気分悪いスね。

番人「いかがなさいます」

ふぅ。
いーっすよ、ほっときましょう。
こっち石だから追えないし。



やれやれ。

なーんか鹿さん悩んでるみたいでしたけど。

クリスマスを流行らせたほうから言わせれば、
今日はそんな特別な日じゃないんスよね。
ただの1日。ただの冬至っス。

世界が感謝で包まれる日?
そりゃ太陽の出てる時間が短いスから、
太陽には感謝せにゃならんでしょう。

まあそれをどう解釈するかは人間たち次第スけど。
別に何をしようって気負うことはないんスよ。

365分の1日。
嫌っても、儲けに走っても、ただ騒いでもいい。
そんななんのことない日っス。

番人 「これからどうしますご主人。今日はもう人が来そうにありません」
番人 「私は全然お腹が空いていないので、もっと働きたいです」

そうスね。
今日はもうお開きにして、どっかにインパラでも食いに行きますか。

番人 「はい、そうしましょう」
番人 「嫌です。いいアイデアだとは思いません」

行きますか。


          ☆           ☆


あ、そうそう、ところであなた。
ええ、あなたですよ。

せっかくスから、なぞなぞだしますね。
間違えたらパクッといっちゃうんで慎重に答えてください。


問題です。


こちらの彼。
さっき鹿さんの問いに、「はい」と答えた番人さん。

彼は……、

どっちの番人でしょう?



コメント

 

コメント

 
管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

Powered by FC2 Blog

FC2Ad


Copyright © 雨が降っても空を見る All Rights Reserved.