SS Eraser


 そいつは突然現れたの。私の前に。
 すぐに分かったわ。普通じゃない、この世のものじゃないって。


 学校帰りで何の準備もしてないわたしは、ただ逃げることしか出来なかった。
 走って、走って、走って。でもあいつはものすごく速い。車みたいに速くて、すぐに追いつかれちゃった。
 私はとっさに林に逃げ込んだ。あいつは私を見分けるセンサーみたいのがついてるらしくて、すぐに追ってきたけど、センサーは万能じゃないみたい。途中で見失うことが多くなった。それで時間を稼げて――助けられたの。
 助けてくれた人は、自分を未来から来たと名乗ったわ。そしてなぜあいつが現れたのか。なぜ私が狙われるか教えてくれた。

 大切なのは私でなく、あゆみお姉ちゃんだった。

 何年かあとのことになる。機械の情報網が世界を覆ったころ。機械のなかに、単一の意思をもつAI、つまり機械に知能が誕生したんだって。
 機械の知能は人類に造反。すべてのネットを使って攻撃を仕掛けてきた。人類と機械の戦争が始まった。
 人類はことごとく敗れていったけど、ひとつだけ強く反発した組織があった。
 その組織を率いるリーダーは、あゆみお姉ちゃんの子供なの。
 機械たちは怒り、そして焦った。なんとかしてリーダーを倒そうとした。でも完成された組織を相手にするのは難しい。そこでひとつの殺人機体……『イレイザー』を過去に送り込み、母親であるお姉ちゃんを抹殺しようとした。
 イレイザーはセンサーで、お姉ちゃんに関係のあるものすべてを抹消しようとする。お姉ちゃん自身はもちろん、お姉ちゃんの名前が書かれたものや、妹である私……全部。

 本当に怖かった。死ぬかと思った。
 警察に逃げ込んだ私を追ってきて銃撃戦。スクラップ工場へも追ってきたし。こっちはバイクなのに大型トラックで踏み潰されそうにもなった。お母さんを助けに行った精神病院にも現れたし、爆発するビルにも出てきて、ヘリで追いかけてきた。溶鉱炉に投げ込んだけど、まだだめだったよ。
 未来から来た人は、何度も私を助けてくれて……死んじゃった。
 あの人の命がけの攻撃で、イレイザーはダイナマイトの直撃を受けたんだけど、それでも壊れることはなかった。執拗に私を追ってきた。

 私は逃げるばかりだったけど、でも思ったの。戦わなくちゃって。そして、この家まで追ってきたあいつと、決着をつけることにした。
 小学生のわたしにはとても勝てる相手じゃなかったけど、未来から来たあの人からのダメージもあって、最後はね、なんとか冷蔵庫に閉じ込めたんだ。イレイザーはカチカチに固まっちゃって、鉄で出来てるからすごく脆くなってた。それで、最後の銃弾でばらばらにして、なんとか勝てたんだ。
 でも……でもね。
 イレイザーにも意地があったんだろうね。
 冷蔵庫にあったお姉ちゃんのものを……壊しちゃったんだよ。














「だから! お姉ちゃんのプリンを食べたのは私じゃないの!」
「…………」
「ほ、ほんとよ? あいつが壊しちゃったの!」
「…………」
「あの、その」
「それはターミネーター。イレイザーはまた別の映画」
「あうぅ」
「ちぃちゃん。人のものを食べたら、言うべきことがあるでしょう?」
「ごめんなさぁい……」






コメント

 

コメント

 
管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

Powered by FC2 Blog

FC2Ad


Copyright © 雨が降っても空を見る All Rights Reserved.