クリスマスSS 5






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 クリスマスなんざでぇっきれぇだ!






 ああちきしょう。酒がまずい。

 どいつもこいつもオレを嫌いやがって。聞こえる。聞こえるぞあちこちから、オレを嫌い、俺を嫌がる声が。

『これだからクリスマスは嫌だ……』
『クリスマスなんてひとつもイイことない』

 くそったれ!

 耳をふさいでも鼻ァふさいでも聞こえてきやがる。どうなってやがんだこんちきしょうめ。イライラしてしょうがねぇ。
 こっちは老体に鞭打ってがんばってるっつーのによ。
 ええい! 酒でものまなきゃやってらんねぇ。

「ご主人。飲みすぎちゃいけませんよ」
「あ!? うるせぇ! 運転手はおとなしく運転だけしてろ!」
「まだ仕事中でしょう」
「うるせーッ! 飲まずにやってられるかってんだ!」

 バーボンの栓をあけ、中をいっきにあおった。
 ……ふぅっ。ったくよォ。

 どいつもこいつも自分は不幸だ自分はツイてない。。
 かと思えば恋人がいるから俺はツイてる家族といるから幸せだ。そればっかり。もううんッッざりだ!

 今日はもともと、他人に感謝する日だろうがよ。
 自分じゃなくて、誰かの幸せを願う日じゃァねえのかよぉ。
 なのに。

『クリスマスなんて大嫌い!』

 ぐ……。
 ええい! これだから人間ってやつァ!

 これが飲まずにいられるかってんだ。運転手はいい顔しないが、またバーボンのふたをあけ、中をいっきに……。

『クリスマスなんて大嫌いだ!』

 がっふ!!

 ぶほっ、うぼっ。……あがががが鼻に! いてぇ! いてェ!
 ……くそっ。誰だ! 人一倍でっけェ声で!

 下をのぞいてみると、ショボくれた根暗そうな小僧が一匹、商店街をはずれた路地裏でとぼとぼ歩いてた。
 あんちきしょうめ……。

 バーボンが鼻に入った痛み、どんなもんか思い知らせてやる!!
 袋をさぐって『プレゼント』をとりだし、ヤツめがけて……。
 ――そらっっ!

 ――すこーんっ

 ジャストミート!
 空中でおもちゃの箱になった『プレゼント』がデコに直撃した。目を白黒させてる小僧。いい気味だ。

「ちょ……っ! なにしてるんですかご主人! せっかくの『プレゼント』を!」
「うるっせぇよ。けっけっけ、見ろよあの小僧、あわくってやがる」
「なんてことを……。あなたはそれを、子供にしかあげちゃいけないんですよ?」
「けっ、いーんだよ。どうせアレはどうあがいても、まわりまわって欲しがってるガキのもとに届くようできてんだ。俺はそのためにいるんだからよ」
「で、でもですね。いちおう、規則というものが」
「うるッッせぇんだ赤鼻! ガタガタいうと首にすんぞ、てめぇは前だけむいてチカチカ夜道走ってりゃいンだよぉ!」
「わ、わかりましたよ」

 運転手は口を閉じ、またしゃんしゃんと鈴を鳴らして走り出す。

 けっ。
 メリークリスマス小僧。そしてこのくそったれな世界。

 ったく……。





 クリスマスなんざでぇッッッきれぇだ!!!!!!






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