映画感想 ドラえもん のび太と南極カチコチ大冒険

はいそれでは、今年の春のどらえもん映画。

もうやってる館もなさそうなので
感想書いていきますよ。
ネタばれなのでまだ見てない方は注意。


過去の感想まとめはこちら






 調子のいいリメイクに比べ、
 まだ若干安定感に欠けるオリジナル映画版。
 今回は一応当たりだった。

 ドラ映画のまず最初のポイントは、冒険の舞台である。
 初期こそ深海だジャングルだと秘境を訪ねていたものの、
 最近は未来、過去、別の惑星が続き、
 さすがにもう現代の地球にのび太が行くべき場所はないのか……。
 と思っていたところで南極!
 これは思いつかなかった。探してみればあるものだ。


 とまあ少なくとも、事前情報の段階では
 奇跡の島や博物館を凌ぐ、
 昨今では最高のスタートと言っていいだろう本作。
 内容についても、新天地における冒険。
 タイムパラドクス応用。分かりやすいピンチ、分かりやすいボス。
 オリジナリティがあって面白い道具と、
 劇場版に求めるものがすべて詰まっている。
 設定の完璧さでは「鬼岩城」「竜の騎士」並み。
 いやあっちには美少女のゲストがいなかった(爬虫類は認めん)ので
 歴代でもトップクラスに完璧な設定である。
 今回はもう間違いなく「分かってる」人が作ってる感が
 ひしひしと伝わってくる。

 ……のだが。
 要素をひとつひとつ箇条書きにすれば完璧なのに
 多すぎて渋滞を起こしてしまった印象。
 上映時間は115分。
 宣伝時間を除けばたぶん100分くらいだと思うが
 120分あっても足りないくらい、詰め込みすぎである。


 前半と後半で雰囲気がガラッと変わる。
 大魔境や緑の巨人伝に似た進行になっている。
 こういう「事前イメージを裏切る」パターンの映画は
 最近だと「君の名は」がそれで、
 おいそれと否定はできないが……。

 個人的にはうーんって印象。
「南極」という言葉で期待していた要素が、
 序盤にダイジェストで消化されてしまうのである。
 その後は謎の古代文明での探検、戦いに移る。


 序盤、南極要素はとにかく駆け足で進む。
 氷山の上に氷のテーマパークを作ることになり、
 OPの時間も使って建設する。
 OPの時間がストーリーに食い込むのは珍しいのもあって
 楽しいシーンである。
 ここもうちょっと細かく描いてくれれば
 日本誕生、雲の王国並みに
 いい感じの秘密基地づくりになったと思うのだが、
 OPテーマ中はしゃべれないため
 テンポが良いだけで「作ってる感」がなかったのが残念。
 うーん、一長一短。

 しかも出来たテーマパークはほんの数分で崩壊。
 氷山に作る子供たちの理想郷は早々に諦めて
 南極の冒険に移る。


 展開の強引さや、「寒さ」への描写不足。
 氷山に対しのび太が普通に死んでおかしくない遭難に陥る、
 ドラえもんの安全対策不足。
 そもそも南極がどんなところなのか解説してくれない点
(今回の解説は氷山の出来方に集中しており、
 南極大陸の恐ろしさ等基本的なことがされていない)
 など、とにかく「尺がない」という弊害が
 幾重も感じられる。

 ただそうした映画版のお約束くらいなら削ってくれてもいいのだが、
 南極の冒険シーンまであっという間に終わってしまうのは残念である。
 ロープで出来る犬ぞり等、
 出てくる秘密道具は面白そうなのに
 あっという間に使い捨てられてしまう。


 南極でのピンチやオーロラを見つけて和むシーンなど、
 面白そうな、もっと言えばここを描いて欲しいというシーン。
 ようするに「南極でのドラえもんたちの冒険」は
 ダイジェスト気味に終了。
 物語はその後、古代文明の遺跡を発掘。作風ががらりと変わる。


 今回のゲストであるパオパオやカーラの登場はここから。
 映画が始まって1時間くらい経ってるだろうか。
 氷漬けにされたドラえもんやパオパオなど、
 タイムトラベルの伏線がまかれ、10万年前にワープ。
 今回のゲスト、もふ助やカーラと共に、遺跡の謎を探りつつ、
 巨人ブリザーガとの戦いに移る。

 ここはちょっと……変化球を狙ったのかもだが、
 いつものドラえもんパターンに甘えたほうがよかった。
 謎のリングを返しに遺跡探検に向かうという流れだったが、
 いつものドラえもんなら
 パオパオかカーラ。もしくは両方が
 おなじみタイムゲートの故障だかなんだかで出てきて
 元の時代に返してあげるため一緒に冒険……的な。



 後半は後半で文句なく面白い。
 なんか遺跡のデザインがラピュタっぽいなーと思ったら
 露骨にナウシカ、もののけ姫をオマージュしたシーンも
(あくまで本筋とは関係ない程度に)出てきたり。
 作り手側も「ここからはドラ外の世界の冒険ですよ」感を
 分かりやすく説明している。

 キャッチコピーにもある「氷は透明なタイムマシン」という
 ロマンチックなアイデアを
 普通にタイムマシンのあるドラえもん世界に
 落とし込んでいるのがいい。
 ストーリー中さりげなく出てきた道具たちが
 最終決戦で上手い具合に使われていたりと
 ドラえもん映画に求めるものはほぼ詰め込まれている。

 とまあ、後半は後半で要素ひとつひとつは非常に良い……のだが、
 前半に南極要素があるせいで、今度はこちらの尺が足りない。
 遺跡内の冒険がやはりダイジェストになってしまっている。
 しかも南極探検よりさらに早足である。


 タコやペンギンなど、もっと掘り下げてもよさそうな遺跡の番人が、
 ふわっと出てきてふわっと退場したり。
 途中いかにも伏線っぽく出てきたクワガタ虫が
 ストーリー中ではその後まったくなかったものなったり。
(ダイジェスト内にてその虫の解答だったと思しき虫が出ていたり)
 序盤のび太の見た、いかにも何かありそうな夢が
 後半のどことも繋がらなかったり。
(タイムマシンネタとも関係ないため、まだ会ったこともない
 カーラを夢に見ると言う単なる予知能力になっている)
 大きく削られたろう要素も見られる。
 前半も感じたが、後半の尺のなさは
 もうちょっと気を使って欲しかったレベルである。



 本作で一番残念なのは、このザックリ別れた前半と後半、
 どちらも非常に出来が良いことである。
 どちらも単体で見たいくらいだ。
 映画の広いスケールを意識した画。
 壮大でハイセンスなBGM。
『映画』としての完成度が、
 逆にドラえもんとしてはやりすぎなくらいに高い。
 もう「のび太の南極」と「のび太と氷の王国」とかで
 2部作に出来なかったの? ……さすがに無理か。


 リメイク以降のオリジナル作としては充分面白い。
 面白いが……。

 100点と100点を無理矢理連結させて
 70点くらいになってしまった印象。


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