映画感想 ドラえもん のび太の新日本誕生

ネタバレ注意




 さて、旧作最大のヒット作「日本誕生」のリメイク。
 僕にとっても旧中で最も思い出深い作品のリメイクとなります。
 はっきり言いますが
 かなりの辛口評価をさせていただきますよ。

 ……ってのは前振り。
 作品としては、「大魔境」に並んでしっかりと旧作を超えた。
 それも過去最上級にうまいことやってくれた
 リメイクだったと言っていいんじゃないかな。


 全体的に見て、不満と呼べるような不満は
・「家出」に対するマイナス描写の付記
・ツチダマの描写変化
 この2点くらい。
 他にも変更されたシーンはあるけど
 どこもその理由はしっくりきておりプラマイ0。
 また上記2点の変更シーンも、時流に合わせて
 仕方ないと言える。


・「家出」に対するマイナス描写
 旧作では「家出は家出でいいもの」とされていたのに対し、
 本作ではママがやたら心配していたり、
 パパがまるでちょっとした息抜きみたいな目で見ていたりと
 かなり大人の視点が入っている。
 これは子供としては、『家出』という『冒険心』に対してケチがつく描写。
 子供の感情として必ずある、親への反逆心の発露である家出を
 マイナス材料として描いており、子供心にイマイチ。
 ただいまどきは下手に肯定的にして『家出賞賛』みたいな形にすると
 いろんなところからケチがつくのだろう。仕方ない。
 旧作のリメイクという時点で大人にも満足なものを作らなきゃだしね。
 あえていうとEDにて、ジャイアン、しずかちゃん、スネ夫3人が
 完全に親の望むようないい子ちゃんになっているシーンの追加はやりすぎか。
 あそこまで大人に都合のいい作品にする必要はなかった気が。


・ツチダマの描写
 旧作においてギガゾンビより不気味で恐怖だった敵キャラ『ツチダマ』。
 今回はかなり不気味さが軽減されている。
 絵柄は旧作の無機質で薄気味悪い『土偶』ではなく、
 色合いや間延びした絵柄から『土偶をモチーフにした敵』に変更。
 線が柔らかくなった新以降のドラえもん同様、
 機械でなく生物っぽく描かれるようになり不気味さが減った。
 また旧作では最後までドラえもんたちを追い詰めるのに対し、
 今回は即座にギガゾンビに溶かされ消滅。
 代わりにハート型などのパチモンがぞろぞろ出てくる。
 ツチダマを増やすというアイデアはいいのだが、
『土偶』という何となく怖いデザインを最大級に利用した
 旧版の良い点をひとつ殺してしまった印象。
 まあ「新大魔界」でも見られた恐怖演出の削減なので仕方ないか。
 おまけコンテンツの「うんたかダンス」を見るにツチダマ、及びクラヤミ族は
 本作では愛されキャラに描かれているため、
 あまり完成された敵役としては出せなかったのだろう。


 不満点は以上の二点。
 そのどちらも脚本の都合上仕方ないことが分かる。

 あえて言うと前者、「家出の捉え方」は
 旧作に合わせて欲しかっただろうか。
 やはり子供映画に最も大切なものは冒険心である。
 最後に家に帰って「良かったね」くらいならともかく、
 途中にも家出を批判するような演出は避けて欲しかった。


 とまあ不満点はここまで。
 本作は、これ以外のあらゆる点が満足、
 でなくても納得できるものとなっている。

 冒頭からしばらくは旧作とほとんど変わらず。
 ママの顔にやたらと陰影がついていたり、
 ドラえもんのオーバーリアクションがちょっと薄かったりと
 演出的にもかなり抑えている。
 OPはかなりアニメっぽいというか。
 劇場版っぽさのない始まり方。
 秘密博物館を引きずってるのだろうか。

 旧劇より時間は長くなったのだが、
 テンポが非常に良い。
 これまでのリメイクでは旧をなぞったシーンでも
 妙に冗長になることが多かったので地味な改善点である。

 何度も批判している「ディズニー症候群」が、
 今回はドラえもんのオーバーリアクションに密集しており、
 本編にすんなり溶け込んでいるのも大きい。
 目がちらつかなくていい。


 7万年前の世界へ行ったあとは、非常に美しい背景が目を引く。
 新劇はずっと背景へのこだわりがすごい。
 世界観を彩る非常によい材料である。
 動物に襲われるという緊張感もしっかり置かれており、
 世界観はさらに上手く作られている。
 ところでジャイアンたちを襲うのがワニからオオサンショウウオに
 変更されてたけど……これは時代設計的な?


 旧作では出番の少なかった3ペットにも見せ場が追加されており、
 ペット3体が平等に目立つようになっているのも好感触。
 ペガは相変わらず「ペガサス」というだけで目立つし、
 ドラコにも後半見せ場があったので、
 旧では完全に乗り物だったグリに
 木の棒を投げてやるシーンが追加。
 こういうキャラ1人1人への満遍ない気の使い方は
 リメイクとしての一番にやっておきたいこと。
 基本がなっているし、
 同時にのび太も3匹の親としての責任感が折々に描かれている。
 旧作ではわりと獰猛というか、戦闘担当な感じだったドラコが
 やたら可愛いキャラになってるのは時流かな。

「翻訳蒟蒻」が団子みたいになってるけど……これも時流?
 最近の子供には蒟蒻ってこんなイメージなのかな?


 旧作では定説だったが現代では否定されたシーンも
「恐竜06」同様強化されている。
「日本人のルーツがクルルの出身地中国にある」というものに、
 説を多様化させていたり。
 まあ中国大陸の原始人が「まじない師が権力を持つ」という点が
 疑問視されている点など、
 完璧にすりあわせきったとは言えないが
 矛盾というほどではないだろう。


「第一歩を踏み外した」「俺母ちゃんの奴隷じゃないっつーの」
「バーベキューにするぞよ」など、
 ハイセンスなセリフはすべて顕在。
 下2つ、とくにバーベキューのくだりは
 感情がこもりすぎててちょっとニュアンスが微妙かな……。
 まあここまで言うのは酷か。
 のび太が大根をそのまま食べてしまったシーンで
「まあこう言う食べ方もある」と苦笑するメンバーの描写が消えたり、
 神隠しの説明が簡略化されていたりと、
 旧作の地味に好きなところがちょいちょい改変されているのは
 ちょっと残念なところ。



 後半。宴のシーンがカットされ、原始時代の生活風景描写になっている。
 これは賛否両論といったところか。
 個人的には「ドーラーゾンビさーまに」の歌は欲しかったが
 原始時代の生活を描くことで劇場版の肝である豆知識紹介になっているし
 ラスボスとの決着への伏線にもなっている。
 どちらともいえない変化だ。

 また犬笛描写の追加。
 ……原始時代に犬笛?
 後半よい演出になったからいいか。
 このあたりから旧作とは明確にちがう点が増えだしており、
 物語は「新」に分岐していく。


 本作最大の変更点はギガゾンビ。
 旧作ではクレイジー&小物といった感じで、
 そのいかにも恐ろしげな仮面と狂った笑い声に比べ、
 正体がびっくりするほどショボいというコミカルな印象が強かった。

 今回は完全な悪役。ツチダマのミスを許さない温情のなさと、
 ドラえもんすら仲間の助けがなくては手も足も出ない強さが特徴。
 インテリ&凶悪といった印象か。
 声優さんも旧作担当が亡くなられているため
 大塚芳忠さんに変更。
 声質が知的すぎて原作のクレイジーさは消えたが、
 そのぶんインテリっぽいいやらしい狂気が出ているし、
 ツチダマを即ブッパするシーンの冷酷さに合っていて良い。

 旧作ではすでにタイムパトロールに悪事がバレており
 基地だけ隠したギリギリのところで働いていたジジイだったが、
 今回はなんとTPに尻尾すら掴ませていない有能ぶり。
 旧では出番のなかったドラミちゃんに、TPの案内と言う役目も与えている。
 マンモスの頭がぱかっと割れるシーンが消えたのは残念だが
 TPは無能であるほどその作品は名作である。
 ……ところで今回のTP、なんで女性ばっかなの?


 ギガゾンビの凶悪化に合わせて後半のストーリーも変化。
 旧作では「脱出」までで終わっていたのが
「戦い」が主題になる。
 旧作ではドラえもんを圧倒したところで
 出番の消えていたギガゾンビだが、今回は最後まで活躍する。
 それを仲間5人+クルルで圧倒していくのはお約束で楽しい。

 そして最後はペットとのお別れ。
 劇場版ドラえもんらしいシーンである。
 そうそう、こういうのでいいんだよ。


 総じて、大魔境を超えるほど完璧なリメイク作品となっている
 新劇版ドラえもんのレベルももう充分と言っていいと思う。

 ゲスト声優も、数作前から完全に脇役に落としてはいたが、
 今回はほぼセリフすら与えなかった点はナイス。
 クラヤミ族に芸人小島よしおとレスラーの棚橋ら筋肉軍団。
 声優というよりは完全に広報部隊であり、
「ウンタカダンス」なる宣伝で活躍している。
 ゲスト声優はこういう扱いが一番やね。
 ……でもプロレスラーって子供に分かるか?
 もっと言えば最近の子供って「そんなの関係ねえ」とか分かるかな?


 来年は南極大冒険。オリジナルである。
 オリジナルなら秘密道具ミュージアムもよかったし、
 次回も期待しよう。

 次の感想はまた来年。


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