映画感想 ドラえもん のび太の秘密道具博物館

ネタバレ注意


秘密博物館





 全体的にハイセンスさの際立つ、
 ドラえもんには珍しい「オシャレ」な作品。
 怪盗ものだし、ルパンを目指してたのかな?


 新ドラに入って以降、どうもちぐはぐさが抜けなかったオリジナル作品だが
 ようやく色んな諸事情を現場に掴めるようになったのだろうか。
 旧ドラまで含めてかなり上位に入る名作である。

 ジャンルとしては珍しい探偵、怪盗モノとなっており、
 同時にドラえもんには欠かせない
「秘密道具」を主題に置いた初めての作品となっている。
「奇跡の島」につづいて良い題材である。

 劇場版よりはテレビスペシャルに近いテーマで、
 内容もややこじんまりまとまっている。
 だが楽しくないかといえば否。
 むしろ「スペシャルなスペシャル版」と言った感じで
 他の劇場版にはない楽しみがある。
 良作、兼、異色作。


 ドラえもんの鈴が盗まれるという事件が起こる。
 この鈴は、ドラえもん40年の歴史のなかで
 ひげや尻尾と並び歴々で設定の変わってきた代物。
 盗まれた理由はいくらでも想像できるため
 ドラえもんが盗まれて焦る理由は分からない。
 まあこれは容易に想像がつくよう
 序盤にしつこいくらい伏線を重ねてあったが。

「修理工場に鈴が送られていた」ということが
 後々大きな設定の伏線となっている。
 タイム風呂敷のある22世紀に
 どうして修理工場なんてものがあるか分からないが、
 ツッコむのは野暮。


 そんなわけで、のび太が秘密道具により
 名探偵シャーロック・のび太となって犯人を追う。
 見ている側は鈴を盗んだ犯人が
「超空間を越えてやってきた誰か」であることは見ているため
 この推理パートは完全にお遊びだが、楽しい。

 推理によって博物館に何かあると知った一同。
 ドラミちゃんの協力によって
 博物館に招待されることとなり、
 今回のゲスト、クルトに出会う。
 便利キャラ過ぎて劇場版では扱いの難しい「もう1人のチート」こと
 ドラミちゃんが前半で消化されたのは上手い。


 博物館のなかは、子供っぽいアイデアと、
 とくに人気の高い秘密道具アワー。
 子供も大人も楽しめるストーリーラインである。
 しれっと出てくるコピーロボットは
 パーマンの道具だろってツッコミ待ちかと思ったら
 普通に終盤のキーとして機能している。


 今回のドラえもんのチート封じは
「すっぽんがポケットに入って手が入らない」というもの。
 すごい。
 30作品を越える劇場版でも
 類を見ないほど雑な封じ方である。

 博物館を回る一同。
 いかにもラスボスになりそうなロボット。
 展示物なのに触れてしまうという
 若干無茶な太陽など、後々鍵になりそうなアイテムを見せつつ見ていく。
 途中にある「タケコプターの歴史」みたいのが楽しい。

 クルトはどうも、最初のうちから
 やたらとラスボスフラグを立てているじいさんと
 知り合いらしい。
 しかもそれを隠しており怪しい。
 が、このじいさんは悪人というわけではないらしいことも分かる。
 あと一緒にいるジンジャーが可愛い。
 ミステリーの基礎である登場人物の怪しさが折々描かれている。


 ジャイアンとスネ夫が孤立。
 小さくなるという分かりやすいピンチで
 適度な緊張感を持たせつつストーリーを進めてくれる。
 最初から怪しかった館長が
 怪しい行動をとっているのを突き止める。
 ドラえもんたちは、ゴルゴンの首をいじってたら
 ワームホールが沸くという
 これまた雑な展開でジンジャーたちを突き止める。

 太陽製造機の失敗作という
 さらに分かりやすいラスボスが登場。
 一度全員が集合し、休憩時間となる。
 ガリバートンネルの片付けといいすっぽんといい、
 全体的に雑だな今回……。
 まあこのくらい子供っぽい展開は別にいいだろう。
 とくに理由のないしずかちゃんの脱衣もいい感じだ。


 途中ドラえもんとのび太の関係を描きつつ
 改めて「怪盗デラックス」が話の主題に戻る。
 デラックスを追いかける展開になり、
 クルトや館長の怪しさが加速。
 怪盗デラックスを迎え撃つことに。

 秘密道具を駆使して迫る怪盗デラックスに対し、
 まったく秘密道具を使わず迎え撃つ警察。
 雑である。
 いわばドラえもんのチート力を相手だけが使ってくるようなもので、
 勝てる要素がない。

 唯一秘密道具を使える警部と怪盗デラックスの一騎打ち。
 たんなる茶番だが、大人が一番楽しめるポイントでもある。
 過去に出てきた道具のうち、
 相反する効果の道具の出し合い。という勝負方法なのだ。
 子供のころから「この道具はこれがあれば相殺できるのに……」
 という感覚を思い出させてくれる。

 泉の女神が襲ってくると言うわけの分からない展開とともに
 結局デラックスには逃げられてしまう。
 いかにも怪しいタイミングで戻ってくる館長。
 子供なら疑ってしまい、
 大人なら混乱するポイントである。
 いかにも怪しいけど、普通のミステリーなら犯人なわけない。
 でもこれはドラえもんだし……。


 ここからが推理パート。
 修理工場の話と、ペプラー博士の話。
「6体のナポレオン」あたりを読んでいるとすぐに分かる展開だが、
 さすがに子供は知らないだろう。
 絶妙にホームズを噛ませてくるあたり面白い。
 ポポルの伏線も分かりやすく、
「子供は分からず、大人には分かる」という
 ちょうどいいミステリー具合。

 ゴルゴンの首に道を塞がれる。
「すっぽんが邪魔して秘密道具は使えないが
 1人が噛まれてる間にもう1人が出せばいい」という
 身も蓋もない対処法で倒す。
 雑な封じ方を雑に打ち破る。こういうのは好きだ。
 その混乱に乗じてやや強引な展開とともに
 怪盗デラックスの正体がわかる。

 謎解きパートは完全に子供向け。
 反面、大人も「きみはじつにばかだな」の
 ドラえもんのセリフでニヤリとさせてくれる。


 犯人は「泥棒を咎められる」という
 性善説にのっとった方法で犯行を自供。
 話はペプラー博士に移る。
 実験が失敗し、秘密道具が全て消える事態に。
 ……こうなるなら最初からすっぽんいったか?
 先ほどの太陽が暴走し、
 島が消滅しそうな事態に。
 前半で出てきていたガードロボも暴れ出すが、
 ドラえもんが謎の変身と共にバトル開始。
 このカッコ悪くてカッコいいバトル展開は熱い。

 最後の逆転の閃きも、
 ちょっと強引ではあるものの
「推理帽のひらめきがあれば」というのび太の一言で
 こっちも「のび太自身のひらめきで倒したい」という
 気分にさせられて
 かなり無茶苦茶な解決方法だが気分がいい。
 最後にはしっかりドラえもんのチートも復活し、
 あっという間にピンチを解決してくれる。
 そして鈴にまつわる友情の秘話。


 総評としては、とにかく雑。
 そしてその雑さが楽しい作品。
 大人と子供どっちも楽しめるようにできている、
 エンターテイメントに全振りの名作である。
 劇場版全体でもかなり上位に入る。
 子供のころに見ていたらベスト3に入ったかな。
 ミスリードも子供は騙されやすく、
 大人には分かりやすく。
 つまり大人も子供も楽しめる。

 藤子先生は全体的に理詰めで話を作るのだが、
 今回はあえてその逆をいっている感じ。
 より子供に向けて作っているためか、
 逆にちゃんと説明すればいいだろう展開をあえて説明していない。
 理屈を放棄したようなシーンが多かった。
 子供映画として正しい姿である。
「国民的アニメ」であるドラえもんのニーズに合っており
 誤解を恐れないでいうなら、脚本では頭が固い藤子先生よりも
「ドラえもん」らしい作品としてかけている。

 藤子先生の影におびえることなく冒険している。
 こういうシナリオは見習いたいものだ。




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