映画感想 ドラえもん のび太と奇跡の島

ネタバレ注意


奇跡の島


 当時流行っていたカブトムシを起点に、
 のび太がパパとの友情を育むと言う
 分かりやすい+珍しい
 劇場版全作でもかなり練られた設定の1作。

 設定の上手さだけなら「鬼岩城」に匹敵すると思う。
 が、設定はいいものの内容はかなり雑で、
 勢いで突っ切るタイプの作品。
 子供のころに見ていればもっと感想も変わってたかな。
 でももうカブトムシブームは過ぎてるので
 これから子供に見せてもあまり意味ないかも。

 長らく問題だったゲスト声優によって
 物語の大事なキャラがおかしな空気を運び、映画から
 集中力を欠くという点が、本作ではっきりあらためられた。
 ゲストのダッケに孫悟空こと野沢雅子
 ゲストヒロイン、ケリー博士に田中敦子さん。
 敵役には山寺宏一さんと大御所ばかりそろえている。
 声優にはあまり詳しくない僕でも分かる陣営である。
 ゲスト声優はかなりどうでもいいところばかり。
 まあ前作鉄人兵団の極楽加藤みたく合う人が来てくれればいいのだが
 その確率は高くないし、こっちのほうがいいだろう。


 パパに飼ってもらったカブトムシが
 いきなりジャイアンのカブトに惨敗するシーンから始まる。
 なぜかラップを始めるジャイアンとスネ夫は、
 このころ妙に拘っていた
 掴みにギャグを入れるパターンの一貫だろう。

 パパの過去話。
 分かりやすい伏線が張られる。
 新劇恒例、部屋をメチャクチャにされていると、
 出てきた絶滅種のダチョウ(ジャイアントモア)の
 棲める場所を探すことに。
「宇宙パワーで住むのに最適」という
 よく分からないが絶滅動物の住める「奇跡の島」に行くことになる。
 この島の設定はちょっとふわふわしている。


 ガイドの人が間違えて
 30年前のパパが連れて行かれてしまう。
ドラえもん「雑なやつだな」
 雑どころじゃなく、ガチでタイムパトロールが動くべき事案を起こしているが、
 TPは相変わらずドラえもんの活躍を邪魔するためにしか動かないので
 お咎めなし。


 センターの管理者ケリー博士と仲良くなり、島を回る。
 新劇に入ってからというもの、
 やたらと女性のゲストが増えた気がするのは
(旧のころはのび太の友人になるため、年の近い男の子が多かった)
 ちょっと「あざとい」と思う部分があるのだが。
 今回は明確にあざとい。

 ケリー博士、若すぎる。若すぎるし可愛すぎる。
 立場的にはどう考えても30歳は越えてる、
 子供映画の無茶設定だとしても20代半ばくらいだろうに、
 外見はのび太たちより少し年上。中学生くらいである。
 声優は洋画吹き替えで有名な田中敦子さん。
 アニメだと「攻殻機動隊」の少佐役が有名だろうか。
 まちがいなく大人としてキャスティングされているのに。
 新劇以降はデフォルメが強いデザインなので
 はっきりいって設定と外見が一致してない。

 まあゲストヒロインが可愛い分には文句はないし、
 もしかしたら30どころか40超えてるけど
 ゴールデンヘラクレスや宇宙の謎パワーで
 容姿は15歳くらいのまま。
 とかの設定だと思うと興奮するのでいいか。


 絶滅動物を紹介しつつ、デカいカブトムシを見つける。
 叩いただけで全ての記憶を奪い取ると言う
 かなり凶悪道具の「わすれんぼう」を
 見つからないからと「仕方ない」と置いていくドラえもん。
 おいおい……。
 描写はなかったけどあの道具、動物に効果はあるのか?
 もしあるとしたら絶滅動物たちが無差別で記憶を失ってしまう。
 生態系が変わってしまうぞ。
 この奇跡の島にとって、
 ドラえもんが今回の敵以上の混乱を招く存在となる。
 ここら辺は必要な舞台設営だからいいけど……。


 案の定、ここに来ていたパパがそのせいで記憶を失う。
 さらには島に住んでいたらしい言葉の通じない子たちと知り合い、
「ナンダッケ」という名前に。

 保護地区からカブトムシを持ち出すのは当然違法。
 すぐに連れ戻される。
 島に影響を与える宇宙パワーは、
 ゴールデンヘラクレスと言う謎のカブトムシの力らしい。
 当然ジャイアンたちはそれを探しに行く。

 野生動物に襲われたところでドラえもんのチート封じ。
 今回はここまでにすでにショックガンなんかは封じられており、
 ここでさらにどこでもドアとタケコプター
 桃太郎印のきびだんごが封じられる。
 きびだんごとタケコプターはともかく、
 野生動物に対しどこでもドアを出して壊されたドラえもんは
 何がしたかったのだろう。

 それはともかく、のび太そっくりなパパこと
「ダッケ」と知り合うことに。
 島に住む謎の民族と知り合い、
 ひと時の休息。
 カブトのカブ太を、一族のコロンが欲しがる。
コロン「僕は悪くない!」
 ……ん? 可愛いけどコイツ、男?


 コロンの案内で、ゴールデンヘラクレスがいるかもしれない
 命の泉へ。
 直後、敵が村を襲う。
 一気に緊迫感の出るシーン……の途中で
 声かたまりんの話が入る。
 絶対ここに入れるべきではなかったな。
 のちのちの伏線だとしてもタイミングが悪くてテンポを崩す。


 コロンとスネ夫がさらわれるわけだが、
 秘密道具が尽きており闘う道具がない。
 だがジャイアンは助けに行こうと言う。
 実にジャイアンらしい……と思いきや。

 しぶるスネ夫に対して

しずか「私も行く。道具がなきゃ何もできないの? そんな人大嫌い」

 アニメ版ではほぼ天使のように性格よく描かれてきたしずかちゃんが
 30年ぶりに原作の理不尽毒舌キャラ復活である。

 スネ夫といえば劇場版では理不尽にヘイトを被るキャラであり、
 それが見ている側の不安感をあおる演出になっていたり、
 ジャイアンや時にのび太の勇気を奮い立たせるきっかけにもなる。
 つまりスネ夫の無能化は決して悪いことではないが……。
 いくらなんでもしずかちゃんに罵倒させるのはやめてほしい。
 しかも理不尽に。

 とりあえずメンバーとダッケで助けに向かう。
 村の人たちは「戦う術を知らない」という理由で
 村長の孫がさらわれたのに1人しか付いて来ないらしい。
 拷問に耐えるという場面で
 なんとか面目躍如を果たすスネ夫を挟みつつ、
 救出は成功。しかし
 ついに敵の手にゴールデンヘラクレスが渡る。


ドラえもん「この道具が何かの役に立つかもしれない」
 と残っていた秘密道具を出す。
 さっき「戦う道具はない」とか言ってたが
 戦闘向きの道具ばかりで敵の雑魚は瞬殺。
 またご存じチートアイテムのビッグライトも残っていた。

 なぜかビッグライトはカブ太を巨大化させただけで
 その後使おうとせず、ピンチに陥るも、
 ゴールデンヘラクレス復活でカブ太が力を得、
 敵を瞬殺する。
 そしてダッケ含むみんなとのお別れへ。


 総評としてはなんというか……設定は完璧だったのに
 悉く使わずに終わってしまった印象。
 ダッケ=パパというのは、この作りなら最後のオチまで隠すべきである。
「魔界大冒険」や「ワンニャン時空伝」に代表されるよう、
 タイムパラドックスオチは、
「ドラえもん」という作品において外れ用のない、
 ある種のジョーカー的な設定なのに、
 オチを開始20分に持ってくるのでは意味がない。


 まあそれ自体は、CMで「パパとの物語」とするため
 完全にネタバレしてしまうので仕方ないと思う。
 ただ最初から明かしてしまうなら
 もう少し全編にわたってダッケを活躍させるべきである。
 父子の友情という良い題材なのに
 それが描かれるのが
 ストーリーにまったく絡まないのび太のピンチを
 ダッケが救うシーンだけなのである。

のび太「逃げようとしてるのに足が動かない」
 という「人魚」でも見た「ピンチになるための動きからのピンチ」に対し
 すんでのところでダッケが救う。
「息子のピンチを救うパパ」はいいのだが、
 ピンチが強引すぎる。
 親子の共闘や、
 バトルを絡めないならせめて冒頭でカブ太を選んだシーンで
 パパがカブ太に見覚えがあると思うなど
 過去と現在の繋がりを描くだけでよかったのに……。


 こうした「設定の惜しさ」以外はいい作りである。
 ドラえもんのチート封じも力技ながら出来てるし、
 ジャイアン、スネ夫にもしっかり見せ場がある。
 その分のび太が完全にダメな奴でつねに足を引っ張ってくれるが、
 その分ダッケが活躍してくれるので気にならない。
 単品としてはよくできているだけに
 設定のよさをブン投げた惜しさが逆に際立つ。

 これまでのオリジナル作品のなかではかなり良い出来なのだが
 だからこそ「あと一歩」の物足りなさが際立つ作品。








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