映画感想 ドラえもん のび太の緑の巨人伝

ネタバレ注意
 新に移ってから初の、ついにオリジナル作品となる。
「雲の王国」に出てきた動く木のきー坊が主人公となる。
 このためかとくに導入部分の演出は雲の王国を意識したものとなっている。
 あちらを見ているとなんとも不安感をあおる導入で良い。

 しかしきー坊のオリジナルエピソードからはだいぶ改変されており、
 とくに中盤以降はまったく別の物語となる。



 序盤はテンポといい動きといいかなりの良作である。
 きー坊を拾ってきてから仲良くなるまで35分。
 テンポよく進み、友情をはぐくむ過程で
 どこかおかしな異変が日常に入り込んでいるのが明示されていく。


 暴れるきー坊に部屋をメチャクチャにされる。
 なぜか劇場版ではよくめちゃくちゃになるのび太の部屋だが、
 新劇版では毎度着実にその伝統にのっとっている。
「ペット」ではないため、同居を認めざるを得ないママが、
 きー坊を可愛がり出すエピソードなど、ちゃんと説得力がある。
 基本逃げるしかできないペットの敵であるママを、
 あっという間に味方につける様はお見事。

 ジャイアンを味方につけるのも決して強引ではなく、
 一度ケンカしたうえで
「とてもかなわねえ……子分にしてやる!」と
 実にジャイアンらしい理由で仲良くなる。
 全キャラが生き生きしていて、きー坊が無理なくドラえもんの世界に
 入り込んでいる。

 時折はさまれる、突如木々が消えてしまった光景。
 きー坊に対する「そのうち僕らを雨宿りさせてくれるくらい大きくなる」という評価。
 水浴びをする幼女など、
 後半に向けて何かを予感させる描写が続く。
 アニマル惑星で見た道具なんかも使われていて、
 旧作ファンニヤリのサービスもうれしい。



 が、中盤以降はもう、別作品のシナリオを
 くっつけたように世界観が変わる。

 のび太たちは謎の機械に吸い込まれて緑の王国へ連れていかれるのだが、
 ここ以降、これまでの30分間とのつながりが
 完全に断たれてしまうのである。

 まず「緑の王国」というのだからきー坊となにか関係あるかと思えば
 まったく関係ない。
 きー坊はただ普通に地球に生えてた木である。
 厳密に言えば終盤、きー坊が敵の最終兵器の
 なんらかのトリガーに使われるのだが、
 それがなぜかは説明されない。



「雲の王国」同様環境問題をメインに描いているのだが、
 緑の王国の人たちは、全員植物であるがゆえに
「俺たちの仲間の植物をいじめる人間は許せないから絶滅させる!」
 という、環境問題というか種族間戦争のような話に。

 物語自体も、前作「新魔界」とは別の意味で
 裏の事情を感じさせるちぐはぐさ。
 必要な説明が徹底して抜けている。

 王女が父母を失って拗ねてるらしいが、父母を失って
 どう心移りしたのかが分からない。
 謎の仙人が結局誰なのか分からない。
 巨人を呼び出すためにきー坊をいけにえにする必要性はあるのか。
 王女が頭痛を訴えるのは洗脳されてるの?
 きー坊を拘束する、ぐにゃぐにゃする水は何?
 結局あのタケコプターみたいな道具は何なのか?
 地球は植物の星になってしまったが、どうやって元に戻したのか?


 以上の説明が一切なされないまま話は進む。
 あくまで予想だが、
 これ、もとは「緑の王国」として劇場化の予定だったのに、
 無理やりきー坊の要素をくっつけたんだと思う。
 それくらい前半30分とその後の展開に脈絡がないし、
 きー坊と緑の王国の接点が絡んでないし
 後半部分で解説すべき部分がすっぽり抜けた、
 尺足らずを感じさせる展開になっている。


 この雰囲気で楽しむ感は、もののけ以降のジブリ映画。
 とくにポニョを連想させる。
 ただこれはドラえもんなのである。
 アニメーションを駆使して
 絶大な情報量を叩きつけてくる宮崎監督作品と、
 キャラのやり取りや会話で
 あくまで現実感を残しつつファンタジーを楽しむ
 藤子先生のSF(少し不思議)作品を
 ごっちゃにしないでいただきたい。

 そんなわけで、ジブリ的な盛り上がりを見せた話は、
 もののけ姫っぽい最終決戦へ向かったかと思うと、
 最後は「愛は世界を救う」とかいうディズニーな解決を見る。
 だからドラえもんなんだって!

 この最終決戦は本当に擁護できない。
 ドラえもん映画は、はっきり言って半分近くが
 最終決戦がしょぼいのは事実である。
 尺が足りなくなっているのか、
 ドラえもんをガチで苦戦させる敵が描きにくいのかは
 分からないが、ラスボスがあっさりしすぎな作品が
 かなりの数ある。

 だがそれでも『勝利』はしていた。
 苦しめられた状況からの逆転はしていたのだが、
 今回はもう……。短いどころか最終決戦そのものが消滅して
「光ったら全部解決してました」という終わりかた。


 ここら辺は正直ついていくだけでさっぱりだったが、
 一応ラスト、恐竜、新魔界でなくなった
 余韻深いエンディングで救われる。
 きー坊との別れを終え、ママに甘えるシーンの描写、
 演出は非常に上手い。
 ……このシーンのために最終決戦が犠牲になったと思おうか。

 前半の上手さから直接つながるシーンなだけに、
 やっぱり緑の王国に関するシーンだけが
 あとから急遽追加されたんじゃないかなと思う。



 またおそらくこの作品が、劇場版全作通しても
 もっともディズニー病がひどいところだと思う。
 動き過ぎである。
 みんながみんな、どんな動きを取るにも予備動作があるため
 さすがに鬱陶しい。
 とくに終盤、水をバケツで掬うだけの動きを
 やたらくねくねしながら行うのは
「その予備動作の方が大変だろ」とつっこみたくなる。

 キー坊の小さな身体は
 こうした予備動作のあるダイナミックな動きがあっている。
 演出として処理できるのだが……。
 中盤以降、そんなキー坊に限ってあまり動かなくなるのもどうかと。

 そんなわけできー坊との友情が描かれる前半30分は
 かなり楽しい作品である。
 毎度問題のゲスト声優も「恐竜06」と同じ、明確なセリフがないため
 気にならない。



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