映画感想 ドラえもん のび太の新魔界大冒険

ネタバレ注意
 リメイク第二弾。新に移ってからも第二弾となる。

「恐竜06」は僕の感想としては
「リメイクとしてはイマイチ、新作としてよし」だったので
 今後もこの路線で行くのかと思ったが、
 どうやら06路線は受けがよくなかったらしい。
 その後のリメイク作品はどれも
 細かい矛盾点、説明不足には補足をいれつつも、
 流れそのものは完全に本家を真似たものになってしまった。

 残念半分、期待半分といったところか。
 純粋に「藤子先生のシナリオ」を
 最新の技術で演出したものが見られると思えば楽しみでもある。

 のだが本作で分かったことだが、
「リメイクとして良作」であっても「新作としてイマイチ」は
 作品としては微妙なようだ。
 本作はもろにそれで、
 原作の雑な展開に上手く理由がつけてあるなど
 リメイクとしては良いのだが、
 作品単体として微妙な出来になってしまっている。


 とくにおそらくだが、広報か企画かと
 シナリオの連携が取れていない。
 僕もシナリオ書いてる最中に妙な追加要素を入れるよう言われ
 苦労した経験があるが、
 これだけのメジャータイトルなのだからそんな悩みも
 僕レベルとは比較にならないのだろう。
 後半の尺や説明の足りなさなど、
 本作りで苦労しているのがありありと見える。

 おそらくだが追加要素は「メヂューサの設定」。
 前作では後半突然現れて視聴者を恐怖に陥れたメヂューサが、
 今回は明確にラスボスデマオンの斥候。
 つまり「中ボス」として描かれ、
 さらに後半では、オリジナルの設定が追加されている。
 この部分が完全に浮いてしまっているのである。



 そして最大の問題は声優。
 本作公開は2007年。
 ちょうどもののけ姫あたりから始まった
「大作映画です、芸能人が声優を務めました」が当たり前になった時期であり、
 アニメもメイン層にガンガン芸能人声優を持ちこんでいた。
 最近でこそ芸能人声優は脇役に回る程度で落ち着いているが、
 このころは「主役=芸能人」が当然であり、
 まあ結構な数の名作が壊されたものである。


 やや話がそれるが、この傾向を全否定するつもりはない。
 世間的には芸能人の声の演技力がどうの言われるが
 ぶっちゃけベテラン声優でも下手な人は結構いるし
 僕は基本的に芸能人であろうと声があっていればいいと思う。
「新ドラ」以降、ドラミちゃんの声優はタレントの千秋が務めているわけだが、
 結構ハマっていていいと思うし、
 むしろ「トイストーリー」の所ジョージや
「モンスターズインク」の石塚、田中ペアなんかはベストマッチだったと思う。
 ダウンタウン浜田が声優を務めたため関西弁になってしまった「シュレック」も
 それはそれでアリだと思っている。
(こうしてあげるとディズニーって毎度いいキャスティングするよね)。
 評判の悪い「ハウル」のキムタクや、
 なんなら完全に別物になった「ウォンテッド」のDAIGOなんかもOKである。
「プロメテウス」や「TIME」、「LIFE」はさすがに……だったけど。


 だが本「新魔界」の声優起用の問題点は、演技力ではない。
 もっと根本的な問題を抱えてしまっている。
 本作で使われた声優芸能人は、美夜子さんに相武紗季さん。
 満月博士に生活保護で有名な次長課長河本。
 メヂューサ役に久本雅美さんがついている。

 メヂューサの久本さんが完全に貧乏くじ。
 これはようするに宣伝段階で「怪物の役を女芸人が演じてます」
 という話にしたかったのだろうキャスティングだ。
 それ自体はいい。

 だがだったらせめてメヂューサの名前を変えるべきだった。
 メヂューサ=メデューサとは、言わずと知れたギリシャ神話のおける
 ゴルゴン姉妹の3女で、見た物を石にする怪物である。
 ドラえもんの主視聴層は幼稚園~小学校と思われるが、
 ちょっとファンタジー知識があればこれくらい知っている子は多いだろう。

 つまり「メヂューサ」というキャラが出ることは、イコール
 本作のどこかで「石化」が行われる。ということのネタバレとなる。
 それで序盤に石像が出て来てしまえば……?
 誰だって先の展開が予想できてしまうだろう。

 本作最大の見どころのためには、
「メヂューサ」の名前は絶対に隠すべきなのだ。
 だが芸能人を配してしまっては、当然宣伝、つまり映画視聴前に
「メヂューサ役の久本です」と連呼されることになる。
 宣伝を使って大々的に本作最大のトリックが表ざたになってしまうわけだ。


 また今回、せっかく追加した「メヂューサの正体」の設定。
 これもこの声優キャスティングのせいで前半でネタバレしている。
 まあここは子供には気づかれないかもしれないが……。

 あと演技力は気にしないとは書いたが、3人とも演技力が高いとも言えない。
 とくにメヂューサは終盤「死にかけで非常に大切な台詞をしゃべる」シーンがある。
 なのに「瀕死だが通る声」というのは出せておらず、
 一番大事なシーンで、「ガチの瀕死」という演技をがんばっているため
 声がカスカスで
 何を言ってるかわからないという凡ミスも。

 とまあ色々な理由でシナリオとキャスティングの息があってない。


 次にシナリオの改変、改善。
 本作最大のトリックはやはり
「前半出てきた石像が実は過去に飛んでいたのび太たち自身だった」
 という点であろう。

 先にも述べた通り、メヂューサの名を出したせいでネタバレしかかっている
 この要素だが、
 なんとシナリオ上でもガンガンネタバレ方向に突き進んでいる。
 前半の時点で演出が過剰、過多になっているのである。

 原作では「ゴミ捨て場に捨てられていた」ドラえもんの石像が、
「突然空から降ってきてのび太の部屋に落ちてくる」ようになったり、
 もしもボックスで世界を切り替えるシーンでも
 石像が何か訴えたがるよう写るシーンがあるが、
 原作では「雷雨のなか泣き叫ぶ石像」という絵のなかで
 とくに「雷雨」のほうに描写が割かれているのに対し、
 こちらは何もない空間で明確に石像の顔がドアップになっている。
 つまり「石像がなにか訴えたい」ことを二重三重に演出している。

 ここまでですら、すでにやりすぎである。
「ゴミ捨て場に捨てられていた」石像だからこそ「誰かのイタズラ」で済んだものが。
「空から降ってきた自分そっくりの石像」に、見ている側が理由を考えないわけがない。
 というかその後ドラえもんは気にせずポケットにしまってしまうが、
 空から自分そっくりの石像が落ちてきたらもっと調べないか?
 またその石像の泣き顔が、もしもボックスを使う瞬間に
 何度も挿入されては、
 いくら子供でもこの石像が何を言いたいかうすうす察しがついてしまう。

 もしかして最初から分かりやすくしようと作っていたのか?
 なぜ?



 最後に最終決戦における追加要素。
 本作は原作になかったシーンとして、最終決戦直前に
 メヂューサが「魔界にとって天敵の月を破壊する」シーンがある。
 そしてその副産物としてメヂューサの正体が分かるのだが……。

 ここ、おそらくだが後から追加された物である。
 メヂューサ=「あの人」というアイデアが
 企画のどの段階で出たかは知らないが、
 このシーンはどう考えてもいらなかった。

 月はとくに抵抗もなく破壊されるし、
 破壊された結果何が起こったかといえば、
 敵が倒れドラえもんたちは無傷。
 しかも決戦後はとくに理由もなく復活してしまう。
 完全に「メヂューサの正体を暴く」ためのイベントとなっている。

 そしてこのシーンが尺を食ったせいか、最終決戦は
 ものの2分で終わる。
 原作でも3分しかなくて短く感じたが、
 さらに短くなってしまっているのである。
 全体では15分長くなっているのに。


 メヂューサは中盤も大きく話に絡み、
 ドラえもんたちを騙そうとするのだが、
 このシーンもドラえもんたちに目をつけた理由が分からないため
 不自然になってしまっている。
 序盤中盤終盤、隙なく彼女が足を引っ張って、
 作品としてぐだぐだ感が強い。



 最初にいった通りリメイクとして、
 つまり原作の補佐としてはよく出来ている。
 とくに最後ドラミちゃんが唐突に現れる流れに補完が入り、
 時間の流れに上手く整合性が持たせてある。

 また前作は「四次元ポケット」が最後の武器だったのに対し、
 今回は「どこでもドア」が最後の武器になっている。
 こうした「いつも使ってるチート道具の有効活用」は、
 あまりやり過ぎると次回作以降から緊張感が消えてしまうが、
 今回は新になって2本目。ぎりぎり許されるところだと思う。

 演出過多自体も好き好きだろう。
 最後の「ちんからほい」のオチも、
 原作ではあくまでギャグとして描かれていたのに対し、
 今回はのび太の残したホウキが最後の世界でも残っている。
 =のび太が魔法で空を飛んだことは夢じゃなかった。と明確な補完が入り、
 かなり余韻を感じさせるものになっている。
 藤子作品である以上すっきり感は欲しいところだが、
 ドラえもんはすでに国民向けアニメ。
 感動寄りの演出もよい余韻が残って悪いことではないと思う。


 ただやはり作品としてガタついているというのが感想。
 リメイクとして優秀だが新作として微妙。
 では、作品として微妙という評価に行きつく。

 とくにシナリオ。
 裏の事情が感じられすぎる。
 もっとのびのび書いたものが見たかった。



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