映画感想 ドラえもん のび太の恐竜2006

ネタバレ注意




 新ドラ第一弾。
 旧作品からのリメイク第一弾でもあるが、
 この後のリメイクは「新~」となっているのに対し、
 これだけは「2006」と改題されている。
 正直いまいちなタイトルである。その後新に直したのはよかった。


 ここからは声優が変わっており、まあ色々と思うところもあるが、
 作画、シナリオスタッフも声に合わせて
 ドラえもんのキャラをがっつり変えており、
「よく似た新作」としてリスタート。といったところか。


 原作のドラえもんは基本的に淡々とした解説役で、
 時おりギャグとしてツッコミに回る役回りが多い。
 その際のツッコミが結構辛辣なので、
 ネット上では毒舌キャラとして扱われることも多いのは
 よく知られているところだろう。

 のぶ代ドラは全体的にその口の悪さが是正されている。
 しゃべり方もあって「のび太の保護者」とはよく言われるところ。
 まさにその通りだと思う。
 つまり原作の良さは半分しか活かせていない。

 一方新版。いわゆる「わさびドラ」は、
 ギャグ担当リアクション担当に特化している。
 とくにのび太に対しての当たり方がかなりキツくなっており、
 のぶ代ドラに比べて、道具を出す前のテンションなんかが
 かなりのび太に呆れている感を出している。
 どちらがより原作に近いかは個人の感想だが、
 常にギャグっぽくしゃべるというオブラートに包んだ形で
 たびたび毒を吐く辺りはより原作に近いと言えるだろう。
 反面しゃべりかたがギャグっぽい=落ち着きがないため
 道具解説がイタズラに誘うワルガキのようで
 解説役、保護者には向いてない。
 つまりこっちも、原作再現率は半分だ。

 ようするにどっちもどっちと言ったところだろう。



 声優に関してはまあいいとして、
 そうして新生ドラとしてやる映画の第一弾が
 旧版映画第一弾「恐竜」のリメイク。
 いきなり比較されるほうに突っ込むとは。英断である。

 リメイク作品は今後のものも含めて、
 当時のものよりも、絵、シーン描写、設定などを
 つくりかえたものとなっている。
 こうしたリメイク作品はどうしても前作と比較されがち。
 そして前作を知る人間には低く評価されがちなもの。
 ドラえもんはあくまで子供のための作品であり、
 子供は「恐竜」なんて知るわけがない。という前提であるべきだと思う。
 ただやはり僕は原作を知る人間なので、
 今後、オリジナル作品はなるべく公平に採点するが、
 リメイク作品については辛口になるところも多いだろうことを
 お許しいただきたい。


 さて本作、
 少なくとも前半、中盤はかなりの良リメイクである。

 新生ドラ第一段とあってスタッフが気合入っており、
 とにかくぐねぐねよく動く、
「風使い」「ワンニャン」でも見え始めていた
 ディズニー病が、かなり深刻である。
 昔のディズニー映画で途中差し込まれるような、
 ミュージカル的な、無駄な動きが異常に多いのだ。
 もちろん別にミュージカルシーンではなく、普通のシーンで。

 キャラたちは全員踊っているみたいによく動き、
 重力の方向でも変わったのかってくらいよく転ぶ。
 風使いで触れたよう、こういう動きすぎはあまり好きではない。

 ただこれはまあ個人の感想というところだろう。許容できる範囲。
 序盤はあまりにも無駄に動きすぎてリアリティを欠く有様だが、
 中盤、ティラノサウルス大暴れのシーンや
 タケコプターの電池が切れる逃亡シーンなんかでは、
 多少の荒れこそあれこの動きの激しさで迫力が出ている。
 後半の闘技場のシーンはちょっとぬるぬるすぎるが。
 それ以外のシーンは問題ない。
 本作程度ならいいのだ。
 ……今後もっとひどくなるわけだが。


 敵である恐竜ハンターの登場シーンも
 じわじわ迫ってくるようになっており
 うまくストーリーに溶け込んでいる。
 途中、ヘタレるスネ夫と頼りになるジャイアンという
 映画シリーズの基盤部分はうまく組み合わさっているし、
 途中のカーチェイスに使ったオモチャの出しかたは
 さすがに不自然すぎるし意味のあるシーンではなかったが
 映像的に良い。

 ようするに「リメイク作品」の基礎にしてもっとも難しい、
「オリジナルの補完」が丁寧に丁寧になされている。
 この後もこの方針でいって欲しかったのだが、
 この後でたリメイクの「新魔界」「新開拓史」では
 補完を忘れる面が多数だったので
 本作の出来のよさが際立つ。


 だが本作の問題は終盤。
 恐竜ハンターに捕まったあとの終盤、本作は
「補完」でなく「オリジナル」に進む。
 すでに印象は充分いいのだから冒険しなくてもいのに……。

 終盤のコロシアムに通されてからのシーン。
 ティラノを前に仲間同士でかばい合うという展開が
 追加されている。

 これいるか?
 一応仲間同士かばいあう友情を描いているらしいのだが、
 やたら長い。
 ぬるぬる動くし、そのわりに画面に影が落ちすぎていて暗い。
 画面的にストレスが強いのでは描かれた友情に集中できないし、
 そもそもティラノは「1人殺せば満足」でなく「皆殺し」に来てるのだから
 同じ闘技場内で全員がかばい合っても意味がない。
「怪我した誰か1人をかばうために他全員が挑発するor
 いつも仲間を見捨てがちなスネ夫が率先して囮になる」
 くらいのほうが演出として華があった。

 ちなみに新に移って以降の劇場版は、なぜか毎回この
「敵を挑発する」シーンがお約束のように何度も出る。
 この謎の伝統芸そのものもいらなかったと思う。




 そして何よりの問題はこの後である。
 ティラノの背にまたがり悪役を追い回す名シーンが
 まさかのカット。
 ティラノの役目は、突如登場したスピノサウルスとの
 一騎打ちに変更されてしまう。

 これは賛否両論。個人的に×。
 ティラノVSスピノは、ジュラシックパーク3を見ている人には
 ニヤリのネタで、「恐竜」を題材にした作品な以上
 ぜひとも欲しいシーンではあったのだが、
 肝心の決着がつく前になんだか分からない爆発に巻き込まれ、
 勝負はなあなあのうちに終わってしまう。
 ここまでにスピノが出てくるでもなかったし、
 なんだか不完全燃焼である。

 またラスト、ピー助との別れをすませ
 のび太がピー助との思い出を抱きしめるシーンもカット。
 いわゆる「大魔境」以降の
 あっさりとしたラストになっている。
 ある意味藤子先生の得意なあっさり演出のオマージュともいえるが
 演出方法はやたらと抒情的なのでスッキリ感もないし、
 やはり旧版の良さが削られてしまったのは残念。

 というわけで「恐竜」の良かったシーンを
 2つも削ってしまう、
 リメイクとしては大問題な改変がなされている。


 のだが、
 では代わりに入れたシーンがどうかといえば
 これはこれでかなりいい。

 上記のティラノを相手に挑発するシーンはいらなかったが、
 そのあとスピノとの対決から一気に最終決戦に入る。

 タイムパトロールが爆破したのか、
 なぜか崩壊し始める基地。
 悪役との決着は勝手についてしまうので
 脱出がメインとなるのだが、この脱出が
 ドラえもんの肝である「四次元ポケット」を道具に使うと同時に、
 旧版では活躍のなかったピー助頼りとなっている。

 またその後、未来へ帰る方法も、TPには頼らず
 あくまで自分たちの足で行くということになっている。
「アメリカから日本に行くのに海を越えるシーンがなかったのは……?」
 と思うが、まあ敵の基地が動いてたと思おう。


 出しゃばりすぎなTPや、実質活躍のないピースケなど、
 旧版の不満点を改変してあるし、
 なによりすごいのは、「四次元ポケットを最終兵器に使った」点。
「四次元ポケットの中に逃げ込む」というのは、
 ある意味ドラえもんにおける最大のタブーであり、
 これをやってしまうと大抵のピンチが
「四次元ポケットの中に逃げればいいんじゃ?」になるので
 かなり勇気のいる判断なのだが……。

 せっかくの劇場版。それも新生第一弾なのである。
 これくらい奥の手を使ってくれたほうが
 ドラえもんが新しい世代に生まれ変わった記念として良い。


 総評としては、新作として見る分には文句なし。
 リメイクとしてみると残念といったところか。






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