映画感想 ドラえもん のび太のワンニャン時空伝

ネタバレ注意


 ドラえもん役の声優、大山のぶよさんの体調不良を理由に
 ドラえもん声優は全交代することが告げられ、
 その最後の作品となった。
 ここでスタッフもガラッと入れ替わっているため、
 旧ドラ最後の一作である。

 その後の新スタッフが、ドラえもんのキャラを原作に近いものに戻し、
 また藤子先生の原作をやたらと引っ張ってくる。
 いわばもう亡き藤子先生を中心に活動するのに対し、
 旧スタッフはあくまで「原作、藤子F不二夫」に対して
 アニメ版を引っ張ってきた自負があるため、
 最後まで「アニメドラえもん」を続け切った。
 先生死去のあとなにかにつけて「偽物」呼ばわりされた
 旧アニメスタッフだが、
 もう「ドラえもんは俺たちの作品でもある」と言わんばかりの
 気合いの入った仕上がりを見せてくれている。


 絵がぬるぬる動きすぎる、ディズニー病とも言うべき症状が
 前作「風使い」よりさらに進行しているが、
 まだ無駄な動きは許容できる範囲内。
 むしろ「映画だけあってよく動く」という程度だ。

 ストーリーラインは冒頭から時系列がよく飛んで一瞬混乱する。
 上手い具合に引き込まれる流れとなっている。
 謎の老犬がタイムマシンを作っており、
 映画ではおなじみ異空間に巻き込まれて幼犬化。
 一度捨て猫の描写が挟まれて、
 のび太が子犬と出会うシーンにつながる。
 この子犬と、冒頭の赤ん坊になった犬の繋がりが分からず
 小さい子にはついてこられるか不安だが、
 2回見れば分かりやすいためそれで十分だろう。


 OP前の「ドラえもーん」もヒネりが聞いている。
 今回はドラえもんが「のび太くーん」と呼ぶ。という
 これまでになかったギャグが挟まれる。
 不思議風使いでも「ん?」と1テンポ挟まれた珍しい形だったが
 あまり意味のなかったあちらとちがい
 こちらは面白い。
 ただOPそのものは前作の「普通のOP」路線を引っ張っている。
 太陽王や翼勇者みたいなハイセンス路線が好きだったのだが。


 1作目でいきなり恐竜を拾い、最近では台風まで拾っていたのび太だが、
 今回は普通に子犬を拾う。
 ここら辺は多分1作目と繋げてあるのだろう。
「大魔境」と同じく「謎の犬」を拾ったわけだが、
 今回はまさに犬っぽい犬なので(この時点では本当に普通の犬だったのだが)
 今後どうなるか気になってくる。

 先ほど捨てられていた子猫たちはすっかり悪くなっており、
 魚屋から魚を盗む。
 招き猫を投げつけられて割れるなど不穏な空気。
 絶妙に緊張感が尽きないのは劇場版の基本だ。

 終盤の伏線となるけん玉が出てくる。
 ここに書かれている「の」の形を見ると、
 すぐに冒頭の老犬シーンが思い出されるわけだが、
 時系列が狂っているためさらに混乱が深まる。
 ドラ猫も含めてさらに緊張感が募る。


 捨て犬、捨て猫の楽園を作るため3億年前の地球へ。
 さらにこの少し前に、さらっとしずかちゃんが
「そう言えばニュースで見たわ」という一言を入れているため、
 冒頭ニュースでやっていた「謎の古代遺跡」のニュースが思い出されるし、
 旗に書いた「の」のデザインが最初とつながり、
 だんだんと序盤から崩れた時系列がつながってくる。

 この時系列再構築が、開始わずか20分でされているのが面白い。
 いわば「掴み」を二重に仕掛けてきたわけだ。
 さらに後半へ引きずり込まれる良い材料である。
 あと何気にこのシーン、
 劇場版で初めてスモールライトが仕事をする。


 翼の勇者たちでは戦犯だった進化退化光線銃を使って
 イチたちを進化させる。
 これ結構メチャクチャなことをしているのだが、
 あくまでドラえもんは関わっていないから仕方ないだろう。
 タイムワープの異常によって、1000年ずれた世界へ。
 世界が文明を築いており、
 その世界を探検することに。

 今回はのび太が聖人でいなければならないためか、
 ドラえもんがのび太化。
 ゲストヒロインの「シャミィ」に惚れてしまい、
 プレゼント攻性を仕掛ける。
 しかも結構マズいことを口走ったり。
 ロボット王国でのコロシアムあたりから、どうも劇場版ドラは
 ポンコツ化が激しいような。


 今回の敵は、なんと「動物世界のディズニー」らしい。
 すごいところを敵に回したな。
 シャミィが敵であることは、反応からも分かりやすかったが
 ここですぐに明かされる。

 犬たちのグループ「ハチ」と仲良くなる。
 しれっと使ってるランタンらしき火を起こす道具がセンスが良い。
 泥棒をほとんど責める気がないのはともかく、
 彼らは「ノラジウム」なる鉱石を集めているらしい。

 ほっといて遊園地で遊ぶことになる一同。
 ここが終盤の伏線となる。
 あと「大魔境」のロコロコみたいな乗り物も。

 またシャミィが出てくると、ドラえもんが完全に
 たちの悪いおっかけみたいなことやりだす。
 隕石が降って来て遊園地の地下に閉じ込められるのび太。
 道具は全て生きてるのに「なにかないかなにかないか」してたり……。
 今回のドラえもんは完全に頭が緩んでるなあ。
 それはともかく、ネコジャーランドの核心にせまっていく一同。

 反面、国はどうも危機に陥っているらしいことが分かる。
 大統領の屋敷にしれっと出てくるハチそっくりな初代の似顔絵。
 ここらへんで伏線は出そろうわけだが、
 時系列が複雑なので子供には理解が追いつくのが難しいか。


 ハチたちの親を収容していた施設にたどり着く。
 すぐに見つかって敵に囲まれるメンバー。
 またも「なんかないかなんかないか」で微妙な道具ばかりのドラえもん。
 シャミィに騙され単独行動したあげく、全員つかまってしまう。
 マズいな。
 旧声優陣ラスト作品なのに
 最後の最後でドラえもんが完全にどうしようもないぞ。


 それはともかく、隕石が降ってくるため
 あと36時間で当文明が滅ぶことが判明。
 すでに逃げる準備はできているらしい。
 ちょっと手を打つのが遅すぎるのはともかく、
 その裏で敵はタイムマシンを完成させ、
 未来へ向かい人間を支配しようとしていることが分かる。

 シャミィを盾に脅されて、敵に従ってしまうドラえもん。
 まあ現時点でドラえもんが負ける要素はないので
 余裕もあったと考えよう。


 敵は隕石から逃げるためのノラジウムを持って行ってしまい、
 全国民が逃げ出す方法がなくなる。
 政府が無能すぎるのは気になるけど、
 平和な星だったから平和ボケしてたと考えよう。
 1人逃げていたハチがのび太たちを助けに来る。
 しれっとスネ夫が活躍するのがうれしいところ。

 タイムマシンに乗り込むのび太と、普通に脱出するドラえもん。
 ドラえもんはまた油断してやられる。
 今回の「ドラえもんのチート封じ」は一貫して油断と慢心である。
 まあ一応怒りの力でお約束の頭突きをくりだし、
 敵のボスは倒せるのでよしとしよう。

 ここでようやくイチとハチの関係が明かされる。
 何度も言うが時系列が複雑なので、
 子供はここで分かるくらいかな。
 どうやらのび太たちのことは、この世界では神として
 伝えられていたらしい。


 近所の空き地が聖地になってるのは
 ずぶの影響かな?
 ともあれ、新しいノラジウムを仕入れられたので、
 空港に向かうことに。

 ここで最後の決戦となる。敵ボスが再度襲ってくる。
 ドラえもんはさっき倒したあと放置してたんだろうか。
 まあここのボスの行動は、タイムマシンが壊れた今
 ただの血迷った自殺に近い。
 想定できなかったのは仕方ないと思おう。
 最後は序盤のカギだったけん玉とビッグライトで決める。
 スモールライトを使えば一発だったろとかは言いっこなしである。


 最後はイチことハチとのお別れとなる。
ハチ「私には新しい星で、新しい国を作る責任があります」
 この時代でのハチはただの少年のはずだが……、
 ここの政府は無能すぎるので、旧大統領には頑張ってもらおう。
 隕石を受けて崩壊していく文明。
 ドラえもんがいつの間にタイムマシンを修理したかは知らないが、
 タイム風呂敷もあるし何も言わないでおこう。

 今回のエンディングは島谷ひとみさん。
 最後にふさわしくしっとり歌い上げてくれる。
 またエンド絵では、ドラえもんたち一同が
 手を振って終わるというのが感慨深い。


 エンターテイメントの風使いに対し、
 ストーリーラインのワンニャンといったところか。
 最大の欠点はだらしなさすぎるドラえもん。
 そもそもドラえもんには「ミィちゃん」というガールフレンドがいる。
 別にないならないでもいい設定だが、
 本作には冒頭、ミィちゃんと会ってデレデレしている姿が
 ばっちり入っている。
 これで敵の女にそそのかされて、騙されたと分かったあとも
 デレデレし続けるようでは、単にだらしないやつである。

 そこを除けば2年続けてよいレベルの仕上がりだった。
 これにて旧声優陣によるドラえもんは完結。
 藤子先生亡き後のドラえもんシリーズも
 しっかり締めくくってくれた。





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