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映画感想 ドラえもん のび太の不思議風使い

ネタバレ注意
 本作から作画の線がだいぶ変わる。
 担当の人が変わったのだろう。
 とくに動きの硬かった前年ロボット王国と比べれば
 はっきり分かるほど違っている。

 これがよいか悪いかは人次第。
 個人的には良くなく、悪くなく。
 このころはちょうどアニメがデジタルに移行したころで、
 作業の簡略化に現場が追いついたとかで
 作業量が一気に増えたころ。
 つまり「動ける」ようになった時期である。

 最近では「ぬるぬる」なんて言われる、
 動きすぎな絵柄だ。
 やたらミュージカル風にくねくね動き回る、
 ディズニーがやりがちな妙なクセがついてしまっている。

 これは「アニメーションの技術」を見せることはできても、
 現実的かといえばそうではない。
 手塚治虫作品が構築したまったく動かない「紙芝居系」も
 さすがに味気ないけど、
 ディズニーくらい動くのは微妙。
 ジブリくらいの、リアルな動きで収めておいてほしいところ。

 まあこのころはまだ「ディズニー」か「ジブリ」でいえば
 ジブリ程度に収まっているのでいいけど。


 それはともかく、内容は翼の勇者に続いて
 非常に出来が良い。
 ドラえもんの反則っぷりを封じつつ、甘えつつ。
 前年、無駄が作れず苦労していたロボット王国とは
 だいぶ対照的である。

 冒頭、突如卵から生まれる台風の子供「ふーこ」を見つけるスネ夫。
 ふーこは残念ながらのび太に懐く。
 久しぶりのペットものであるが、
 今回はそれをスネ夫が狙っている点がちがう。
 OP前、やっぱりズボンを引っ張られてお尻を出すのび太。
 最近なかったと思ったらまた……。

 OP絵はここ最近の、劇場版の内容にひっかけた
 センスあふれる仕上がりから、
 普通にドラえもんの道具を紹介するだけのものになった。
 いわばちょっと作画の豪華な普通のOPである。
 これは……うーん、
 単体で見れば悪くないんだけど、前作までが非常に良かっただけに
 ちょっと残念。


 OP後、やっぱりママに「綿あめのペットなんてダメ」と叱られる。
 ぬいぐるみを着て誤魔化すことになり、
 以降のふーこの姿として固定される怪獣っぽい姿に代わる。

 一方スネ夫はふーこをあきらめきれない。
 劇場版通して出番の少ないスネ夫だが、今回は妙にプッシュされる。
 しかし見つからず、その間にもいつも通りあっさりふーこを口説くのび太。
 ……のび太の誰とでも仲良くなれる才能って
 はたから見るとなんかムカつくな。


 それはともかく、風の村へいくことになる一同。
 ここはチベットかな?
 今回はSF要素は極めて薄く、完全なファンタジー路線。
 夢幻三剣士に近い作りである。
 風の民も不思議な道具をくるくる回すと
 風を使って空が飛べたり、完全に魔法使い。
 これはこれで面白い。

 今回やたらと出番の多いスネ夫が敵の「嵐族」に乗っ取られる。
 銀河超特急でもそうだったけど
 スネ夫の出番ってやっぱりこうなのか……。
 まあ何もないよりましだわな。

 ポケットを奪われ、敵にさらわれるふーこ。
 すぐに脱出するものの、
 ジャイアンはスネ夫を取り戻すべく敵のなかに忍び込んだまま。
 敵の狙いはふーこを使って「マフーガ」を甦らせることだという。

 妙に敵役が似合うスネ夫が大活躍して、
 改めてふーこがさらわれる。
 対する風の民は風の船を甦らせて追いかけることに。
 ここらへん翼の勇者と同じくRPGっぽい。
 完全にファンタジーである。


 なんとか敵に追いつくものの、
 操られたスネ夫によってとうとう封印が解かれてしまう。
ドラえもん「お前はスネ夫君じゃないな!?」
 遅いよ。
 操られてることはもっと前に気付いてやれよ。

 よみがえったマフーガによって超大型台風が発生。
 敵のボスが突然自分が未来人だと名乗り出る。
 ふーこを閉じ込めてる道具なんかを見るに
 想像に難くない展開だが……。これいったか?
 未来人は飛行機以外とくに未来道具を使う気配はなく、
 なぜ過去世界を壊すかといえば「この汚れた世界を壊すため」。
 未来人である必要はまったくない。
 ファンタジー路線ならファンタジーのままで
 よかったと思うのだが。


 これまで夢幻三剣士でしか活躍しなかった、
 本来チート武器のビッグ、スモールライトがやっと使い物になる。
 ビッグライトで巨大化するドラえもんは熱い。
 その後は伝説に従い、剣の力でマフーガを倒しにかかる展開。
 ファンタジーらしい出来だ。

 最後はのび太を助けるべく、
 溶岩の力を持ってきたふーこが単身マフーガに挑む。
 ……ドラえもんがいるんだから
 何とでもなりそうなものだけど……、
 ここでそんなことを言うのは野暮だろう。

 いわゆるぬるぬる作画も全盛で、
 戦うふーこ、敵のドラゴン、泣き叫ぶのび太、いずれもひたすら動く。
 絵的には歴代でも、というか劇場版全シリーズ通しても
 熱いシーンだと思う。


 その後は逃げようとする敵ボスを、ジャイアンがあっという間に片づける。
 現実世界に戻ったのび太は
 ふと風を感じ、いなくなったふーこに思いをはせる。
 やっぱりペットものは「恐竜」がそうだったように
「お別れしました、ばいばい」で終わるでなく
 この最後、総括の時間があると良い。


 今回のエンディングテーマはゆず。
 歌詞的にもよくあっている。

 のび太、ドラえもん、ジャイアン、スネ夫(ある意味)
 いずれにも見せ場があり
 スネ夫の立場を許容できれば
 脚本はほぼ完ぺきといっていい一作。
 ちょっとぬるぬる動きが過剰すぎるのが好き嫌いの出るところか。



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