映画感想 ドラえもん のび太と翼の勇者たち

ネタバレ注意





 藤子先生が亡くなって数年。
 ようやく「ドラえもん映画が帰ってきた」と言える出来。
「太陽王」でも充分に抑えていたが、
 さらにドラえもん映画の基礎を踏襲しつつ、
 面白い展開が盛りだくさん。
 テンポも非常によく、単純に見ていて楽しい快作。
 歴代でもベスト5には入る。

 ストーリー的には、SFCあたりでよくやられた
 RPGにありそうなネタと展開。
 分かりやすくて熱い。


 冒頭からしばらく、フラミンゴやペンギンと言った
 世界の鳥たちが映される。
 フラミンゴは干ばつ、ペンギンは重油流出と、
 全体的に人間によってお迷惑をこうむっている様子。

 この演出が非常に上手い。
「翼の勇者たち」、つまり鳥をネタにしているわけだが、
 鳥=自由。というイメージを
 最初から裏切りにかかっている。

 ちょっとした豆知識だが、この「重油にまみれた鳥」というのは
 アメリカでは20世紀最大のプロパガンダ映像なんて言われてるそうな。
 戦争に対する反戦気運の高まりを、
 この重油流出でひどい目にあった鳥を「敵国の行ったこと」と
 繰り返し宣伝することで抑え込めたらしい。
 それほど「重油にまみれた鳥」というのは
 インパクト抜群だそうな。

 そんなわけで、最初からすでに「鳥界の不穏さ」をこちらに刷り込みつつ、
 そのニュース映像を見ながら、
 出木杉君がしれっと「世界には鳥人伝説がある」という解説。
 よかったねえ出番があって。
 豆知識によって、冒頭の「鳥に自由のない世界」から
「鳥人間」へと
 作品のコンセプトをすっと溶け込ませてくる。
 こういう演出というか、構成の妙は見習いたいものだ。


 鳥、つまり空をテーマにした作品だけあって、
 のび太が空を飛びまわるシーンを夢見たり、
 その後のOP絵といい、全体的に絵が美しい。
 あらゆる動物に羽が生えて飛んでいくOPは非常に幻想的。
 太陽王でもそうだったけど、
 このあたりの作品はOPのセンスが神がかっている。


 OP後はしばらく、のび太が羽で空を飛びたいと言い、
 グライダーを作成。しばらくはその練習。
 結局飛べずに悔しがっていると、
 またしてもタイムホールの異常が起こる。
 毎回バグってんなタイムホール。
 この街、神隠しばっかり起きてるんじゃないか。

 今回のゲストキャラ「グー助」が登場。
 ここまで開始からわずか10分である。
 早い。
 最近最後が尻すぼみばかりなせいだろうか、
 今回は前半を一気に飛ばしている。


 ここら辺は友達作りのカリスマ、のび太の腕の見せ所で、
 グー助とは一瞬で仲良くなる。
 しばらくはグー助が元の世界に戻るため
「飛行機」作りを手伝うことになる。
 ここもいい。
 結局飛べなかったのび太のグライダーが再利用され
 無駄にならなかった上、
 のび太の「空を飛びたいという努力」も
 形こそ違えど実現する。


 自然な流れでジャイアンたちも合流し、
 鳥人間の国へ。
 いきなり警備兵に襲われることになる。
 ちょっと話が早いが、ここで冒頭の重油鳥の印象操作が利いてくる。
 鳥界にとって人間が敵であることが説明なく入ってくるのである。

 鳥世界と人間とは相容れないことがすぐにしっくり来ると同時に
「人間の敵」である鳥世界にいながら
 なぜ人間の敵なのかという点が仕方ないと思えることで
 無駄に今回の冒険の舞台を恨まずにすむ。
 竜の騎士や雲の王国にあった緊張感がなくて、
 作品世界を楽しみやすい。


 その後は鳥人間コンテストという名のレースへ。
 ここは正直微妙。
 もろにスターウォーズエピソード1のパクりなうえ、
 全員が一律スピードを競うレースにしてしまっては
 鳥人間たちがいろんな種類の鳥になっている必要がない。

 そもそも本作は、
「アホウドリは飛ぶのに助走が必要」という設定以外、
 鳥の個体差と呼べるものは無視されているが、
 せっかく「飛ぶ」ことに特化したレースなら
 ここにはそうした
「この鳥は短距離が早く飛べるがスタミナがない」
「この鳥は遅いが長距離とべる」
「この鳥はこういう状況だと上手く飛べる」
 といった豆知識も欲しかった。


 ただ盛り上げ方としては充分。
 終盤に出番の多くなるのび太は早々に脱落し、
 レースの主役はあくまでグー助。
 また終盤出番の少ないジャイアンスネ夫も、ここで
 ピンチの女の子を助けるという
 かっこいい配分になっている。
 全体としてのバランスが上手く取れている。


 レースの結果、勝利はしたが、
 大人の都合で失格とされるグー助。
 あらためて鳥世界が敵であることを認識させる手っ取り早い展開。
 前半は「伝説の人」としてもう死んでるっぽく描かれていたイカロスが
 いきなり普通に復活するのはびっくりだが、
 最終決戦に向かう。

 同じく伝説であった「フェニキアの力」も登場する。
 そのまんま怪物である。
 ねじまき都市の熊五郎並みに分かりやすい敵。
 同時にそれまで敵だった鳥世界が、共闘して戦う味方になる。
「竜の騎士」と同じ第三勢力の台頭パターンというやつで、
 単純に面白い。

 進化退化光線銃を誤って使い、フェニキアはさらに凶暴化する。
 今回なにもしてないドラえもんがまさかの無能行動……。
 今回道具は一切封じられてないので
 必殺のスモールライトも出すが、しっぽで弾かれてなくす。

 ちょっとドラえもんがダメすぎやしないですかね。
 まあ最後はドラえもんの機転が決めてくれるし、
 ドラえもんの無能化は
「ろくに道具も出さずピンチ」は微妙だが
「必死で道具は使おうとしたが本人がドジでピンチ」は許せる。
 これもチート封じのひとつと思おう。


 イカロスもわりとあっさりやられてしまう。
 武器も頼れる人もいないが、
 このバードピアの神様こと過去に来ていた
 未来人の遺産に頼ることに。
「太古の怪物を倒すため過去の超道具にすがる」
 良い展開である。

「フェニキアをおびき出す」という流れで、
 ごく自然に空中バトルへ。
 まさに「翼の勇者」らしい展開になる。
 遺産の力はあっさり復活し、ショック砲も発射成功。
 しかし案の定ほとんど効いてない。
 そこで今度はタイムマシンごと地上から追い出すことに。
 時間空間を超越しているドラえもんなら
「大魔境」と同じく1度はやっておきたい反則技である。

 今回のエンドテーマは知念里奈さんが担当。
 普通にラブソングでドラえもんっぽくない歌詞だが、
 メロディラインがよいので綺麗にまとめてくれている。
 ちなみに彼女、声優としてもツバクロウ役で出演している。
 演技は……うん、まあ。


 しずかちゃんはほぼ活躍シーンがなかったものの、
 スネ夫は赤ちゃんとの友情を。
 ジャイアンは「ホゲ」で。
 それぞれ活躍してくれており、非常にバランスが良い傑作の1つ。

コメント

 

コメント

 
管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

Powered by FC2 Blog

FC2Ad


Copyright © 雨が降っても空を見る All Rights Reserved.