映画感想 ドラえもん のび太の南海大冒険

ネタバレ注意!!!




 いよいよ映画ドラえもんが藤子先生の手を完全に離れる。

 ファンの中には、原作である藤子F先生が亡くなった。
 先生原作でなくなった時点でドラえもんは終わり。
 つまり本作からは認めないという人もいるだろう。
 ただ僕は作者は作者、作品は作品だと思っているので
 いい作品さえ作ってくれればそれでいいと思う。
 申し訳ないが、僕は「藤子先生」より「ドラえもん」が好きである。
「面白いドラえもん作品」なら是非とも続いていただきたい。


 …まあ本作は完全にドラえもんらしさを欠いているので
 嫌がる人の気持ちも分からないでもないけど。


 98年の作品。
 ちょうど97年にジャンプではワンピースが始まったので
 ほぼ同じ時期に海賊ものが企画されたことになる。
 このころ妙に海賊系が多かった気がするが
 なにか仕掛けられたのだろうか。

 さてそんな本作だが、やはりドラえもんで
 海賊という犯罪者を扱うことは難しいとあって、
 海賊「もの」。宝探しをメインとした、
 カリブの海賊、グーニーズ的な
 ざっくばらんにいうとディズニーっぽい作風となっている。

 本作以降のドラえもんはしばらく
 藤子先生という舵を失ったせいか
 全体的にハリウッドっぽい、アメリカ映画っぽい空気が漂うようになる。
 この点をどう思うかは個人次第だろう。


 ストーリーとしては、導入部分がかなり微妙。。
 英語でしゃべる海賊たちが宝を見つけるものの
 謎の怪物に飲みこまれるシーンから始まり、
 のび太が図書館で読んだ本から宝探しに興味を示す処までが
 冒頭で示される。
 この際、お約束の「ドラえもーん」の流れが強引なうえ、
 OPテーマは吉川ひなのが歌っている。
 彼女の味ともいえるスローで間延びした歌い方は、
 ただでさえテンポの悪い冒頭の流れを引きずってしまう。

 ただその後は一気にテンポがよくなる。
 宝探しをしたがるのび太の要望を聞いて、
 大海原へのクルージングで宝島を目指すことになる。

 何の説明もなく出てくる帆船のデザインが非常にセンスがよく、
 いやおうなくわくわくさせてくれる。
 ワンピースでもそうだけど、
 やはり「小さいシンプルな帆船で海賊という冒険譚」にはロマンがある。
 大きい船じゃロマンがないんだよなあ、
 ワンピも大きくてごみごみしたサニー号に変わってから微妙だ。
 ゴーイングメリー号に戻してほしい。


 ともあれ、ジャイアンたちも加えて冒険開始。
 時おり現れる幽霊船、イルカの形をした無人島と、
 わくわくさせてくれる演出が続く。
 ……まあこれらは「演出」であって「伏線」ではなく
 あまり活用されなかったが、
 よい小道具にはなっている。

 そして突如現れた海坊主に襲われることに。
 この海坊主登場シーンがなかなか上手く、
 一瞬びっくりさせられる。

 ここで一気に話を進めてしまってもよかったと思うのだが、
 このあとひとつ間が置かれる。
 ドラえもんのポケットが壊れ、
 毎度おなじみ時空間の異常で別次元に飛ばされる一向。
 船は壊れのび太は行方不明。海賊船の海戦に巻き込まれる。
 こうした面は海坊主に襲われると同時に
 一気に進めたほうが良かったと思う。


 この海戦では、ドラえもんがたぶん
 劇場版ドラえもんでも随一の命の危機に見舞われる。
 火薬入りのタルを抱えて大爆発。
 いや、死ぬだろ。
 まあ「雲の王国」でもガス貯蔵庫が吹っ飛ぶ爆発にさらされて
 ボディは無事だったからいいのだろうか。
 さすが二十二世紀である。
 劇場版では電気を食らうと瞬殺されるイメージの強いドラえもんだが、
 爆発ダメージには無敵らしい。

 ポケットは失ったものの秘密道具はいくつか戻るという
 かなり都合のいい流れ(チート封じ)とともに、
 みんなは海賊たちと、宝島へ向かうことになる。
 ゲストキャラのベティとジャイアンが
 いきなりフラグを立てているのが可愛い。


 一方ののび太ももちろん死んではおらず、偶然宝島に到着。
 冒頭に出てきた少年「ジャック」と、ピンクのイルカ「ルフィン」に助けられる。
 こちらには翻訳こんにゃくがないので
 言葉が通じないものの、ボディランゲージでなんとかして親交を深める。
 この「言葉が通じないのに」な流れは意外とドラえもんでは
 見ないシーンである。
 実は最後の逆転の布石であるルフィンがあまり触れられないが、
 ここはまあ顔見せ程度でいいだろう。

 ドラえもんたちも同じく宝島にやってくる。
 襲ってくるメロンや花など、
 なんともディズニーっぽい罠をかいくぐっていくと、
 いきなりラスボスが未来人だと分かるシーンが。
 やや緊張感に欠けてしまったが、まあ予想のつく流れだしいいか。


 島の情景はどこも面白い。
 細く今にも崩れそうながけっぷちや滝の裏側。
 海水の入り込む川辺。空だけが見える岩場。
 ここから、雰囲気は完全に「カリブの海賊」になる。
 海賊たちのリアクションも、足が生えて歩き出す宝箱を
 宝をよこせと追いかけるなどいかにもディズニー。
 ジャイアンとベティのイチャイチャもハリウッド的。

 そして敵につかまり
 話はまさにアメリカ映画的な突っ込みどころ満載に。
 後で分かることだが結構責任ある立場のルフィンは
 どこにあるか分からないはずの秘密基地に
 なぜかのび太らを連れて特攻したあげく
 瞬殺され。
 のび太がつかまってメンバーと再会したシーンでは
 ドラえもんたちはのび太が死んだと思ってたはずなのに
 リアクションが生きてるのは知ってた感じだし。
 現代に出てきたはずの海坊主は中世であるこの時間に戻っており、
 現代に現れた理由は「こいつはよく抜け出す」の一言。
 敵ボスが宝島を作って人を呼び寄せたのは「労働力がほしい」だが
 その労働力よりどう見ても見張りの人間が多い。
 のび太も翻訳こんにゃくが入ったことで
 ジャックも日本語を話すようになるのだが、その演技力が……、
 いやこれは英語が上手なので言わないでおこう。

 などなどかなり雑な。
 良くも悪くも古いディズニーっぽい作風になっている。


 敵ボスの「キャッシュ」がかなり良いキャラである。
 顔も、しゃべり方もやっぱりディズニーっぽいのだが、
 どこか憎めず、かついやらしい怖さを出している。


 また脱出を開始してからの流れも面白い。
 襲い掛かるカメレオンは迫力抜群だし、それをなんとのび太が
 1人でやっつけてしまう。
 突然の有能化だが「襲われるジャックを助けるため」と
 しっくりくる理由がついている。


 一度外に出てすぐ引き返す。
 というシーンが無駄でややテンポを悪くするも、
 その後は残った秘密道具で反撃開始。
 ジャイアン、スネ夫、しずかちゃんの3人が非常に塩梅よく活躍している。
 キャッシュやリバイアサンとの対決も含めて
 テンポよく、うまい具合に消化されており、
 ここはハリウッドからいい影響を受けているといえるだろう。

 エンディングの海賊たちの粋な計らいも小気味よく、
 感動、もしくは日常に戻って安心エンドばかりだったシリーズには
 珍しい形での終わり方となった。
 エンディングテーマ、吉川ひなのの歌う
「ホットミルク」は
 歌詞が全くドラえもんらしくないあたり
 賛否あるだろうが……。

 ハリウッドのノリの良さと雑さが入った、
 良くも悪くも新しい形のドラえもんとなっている。

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