映画感想 ドラえもん のび太のねじまき都市冒険記

ネタバレ注意!!!





 藤子先生の遺作になってしまった一作。
 藤子先生らしい外連味の効いた演出はしっかりと見られるものの、
 話の流れが前年銀河超特急に続いて全体的に雑なのは
 やはり先生の体調的な問題だろうか。


 OP前のアバンでかなりテンションがアップダウンする。
 いきなり怪しげな彗星が現れ
 ラスボスっぽいと印象付けられると同時に、
 画面が切り替わってのび太が馬のぬいぐるみを動かして遊んでいる。
 そのままOPへ突入。
 混乱させられる、いい意味で引きつけられる導入だ。


 と思いきやOP空けには馬で遊ぶ意味が分かった。
 また例の通りスネ夫の自慢話に対抗してなのだが……。

スネ夫「じゃあのび太、牧場持ってるの?」
のび太「ああ持ってるよ」

 雑!

 今回ののび太の意地っ張りは雑すぎる。
「最新のプラモデルを持ってる」くらいの嘘ならともかく、牧場って。
 スネ夫でさえ、「家が牧場を持っている」という設定が出てくると
 ちょっと金持ち過ぎないかと思ったが、
 のび太の家の経済力で牧場って。

 しかもこんなあるわけないことを、いつも通り
ジャイアン「じゃあ見せろよ」
 って。
 ここまで来るとスネ夫とジャイアンの言動も
「こう言っておけばまたドラえもんが
 遊べる牧場を用意してくれるだろしめしめ」的な
 計算すら感じられてしまう。
 まあ2人はそういう悪ガキでもいいけどさ。


 またOP後、すでに馬の「パカポコ」はいるものとして話が進む。
 この動くぬいぐるみはなに? という疑問には答えてくれない。
 その後、舞台となる惑星が紹介され……。
 そこでようやく、ぬいぐるみが動く理由が分かる。
 ようするに「巻くとおもちゃに命が吹きこまれるネジ」を
 ドラえもんが出したらしい。
 ドラえもんなんだからちゃんと説明してほしいところである。
 あとパカポコはもともとのび太の持ち物だったらしいが、
 その説明はどこにもない。


 こうして「ねじまきシティー」が建設される。
 映画開始わずか10分。
 ただこのねじまきシティー、ちょっと設定が苦しい。
 最初は「おもちゃの街を作る」という目的で始まったのに、
 そのおもちゃたちは普通に卵から産まれてしまう。
 そのためほとんど「おもちゃという設定の動物たち」ばかり。
 これ、おもちゃである必要あるか?
 この近くで上映していたはずのトイストーリーに
 気をつかったのだろうか。

 とまあここまで15分。かなり雑な印象の立ち上がりだが、
 ここからグッと話が深くなってくる。
 いやに不気味な森の描写と、
 なにかありそうな湖の存在。
 何かしらの意志を感じる惑星の描写が入る。


 そしてここで、「前科100犯の凶暴犯」という、
 分かりやすいにもほどがある悪役の『熊虎鬼五郎』が登場する。
 なんだこのやる気のない敵は……。
 宇宙一の殺し屋すら倒したドラえもん一味の相手には
 弱すぎるんじゃないか?

 なんて思ったのもつかの間。
 わずか数分後に自体は急変する。
 この鬼五郎が、増えるミラーで分裂するのである。

 笑っちゃうと同時にすごい展開だ。
 銃を持った凶悪犯という分かりやすい悪人が、「人数が増える」。
 ここまで分かりやすいピンチ、シリーズを通しても見たことない。


 こうして鬼五郎に気を取られているうちに
 シティーはどんどん進化していく。
 ぬいぐるみたちに自我が芽生え、街が育っていく。
 現実世界からもおもちゃたちが動きだして、人口も広がりを増す。
 この間、ちょっと視点が鬼五郎に傾き過ぎている気がするが、
 今回は悪役の存在はあまり必要ではないので、
 憎らしさを煽らないための演出だろう。
 凶悪な「オリジナル鬼五郎」と、お人好しの「ほくろ」の
 キャラ違いも説明される。


 ドラえもんと鬼五郎は同時に湖の金塊を目指して旅をし、
 また金塊が意志を持って動き出したことで
 三つ巴の戦いが始まる。
 一時的に鬼五郎との共闘もあり、
 明確な敵が分からないまま話は進む。

 金塊の正体はまさに藤子先生らしい存在だった。
「敵でも味方でもない神様」
 のび太たちの邪魔はしないが助けもしてくれない。
 こういう「淡々とした全能」は
 藤子F先生、A先生どちらもが好むキーパーソンである。
 というかそもそもドラえもん自体も、
 最初は「淡々とした全能キャラ」だったし。

 助けてくれるのは植物、つまり『星の意志』であり、
 雲の王国でも触れられていた「環境を敵に回すな」という
 メッセージが分かりやすく述べられる。

 同時に鬼五郎の凶悪性が復活。
 最終決戦に向け、また敵と味方は二極化する。


 ただここからの展開はいまいち。
 鬼五郎VSねじまきシティーになるのだが、
 鬼五郎側は銃しか持ってないうえ
 ドラえもんの道具は全部生きている。

 負ける要素がない。完全に消化試合である。
 というか鬼五郎、銃はリーダーの1人しか持ってないらしい。
 増殖したときは驚いたものだが、
 これじゃ単に顔デザを楽したモブが増えただけである。

 最終対決はのび太との撃ちあいになるわけだが、
 ちょっと無理に盛り上げた感が強い。
 そもそものび太たちとねじまきシティーの友好が
 ほとんど描かれていないので、
「街を守る」感があまり出ないのである。
 さらに最後は、のび太が街と関係なく育ててた
 パカポコと共闘し、惑星が助けてくれるという展開。
「ねじ巻きシティー」がまったく絡んでこない。


 なお、本作は途中で藤子先生が亡くなられたためか、
 これまでずっとテーマ曲を担当していた武田鉄也氏が
 本作以降協力から消える。
 全体的にドラえもんにあった良い曲を提供してくれたので
 続けてほしかったのに……。

 代わりにエンディングテーマは、なんと矢沢永吉氏が担当。
 いい曲ではあるのだが、
 歌詞がドラえもんにあってるといえるかは……。


 アニマル惑星や雲の王国では露骨だった環境問題が
 話から浮くことなく、
 かつ説得力をもって語られる
 中盤がクライマックスといったところか。



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