映画感想 ドラえもん のび太のブリキの迷宮

ネタバレ注意~♪





 大長編ドラの課題のひとつ、ドラえもんのチート封じが
 おそらく最も端的かつ強力な方法で行われた作品。

 冒頭がなんだかおかしな感じだ。
 しばらく真夜中の野比家が映され、やがて
 テレビのざーざー画面を前に寝ているパパに移行。
(最近の子供はこのテレビのざーざー画面の意味が分からないんだろうな…)
 テレビに突然ホテルが映しだされる。
 そこまでならいいのだが、そのホテルが話しかけてくるのである。
 不気味……というほどではないがなんだかおかしい。

 その後、前年の「雲の王国」に続き
 まったく関係ない、そのときは寝ているはずののび太の
「ドラえもーん」の声でOPへ。
 ……今回のOP、ドラえもんの眼が一瞬焦点が合わなくなる気が。
 気のせいかな。


 いつも通りスネ夫の自慢話……でなく、
 ジャイアンやしずかちゃんまで含めたメンバーの自慢話に、
 一瞬強がるもののやっぱり悔しがるのび太。
 こういうちょっとした「お約束崩し」は楽しい。


 夢で聞いただけと知って一瞬落胆するものの、
 すぐにブリキンホテルに案内されるのび太たち。
 どう見ても20世紀の地球上にはない生命体やおもちゃがしゃべっているが、
 のび太はもちろんドラえもんですら不思議がる様子がない。
「いったい誰が……」とか言ってるけど、
 もうちょっと警戒しろよ!
 …でももう10年以上冒険してるんだもんな。
 1回も不思議世界を冒険してない僕らとはもう感性がちがうんだろう。

 ホテルを楽しむのび太たちだが、こちらの眼から見れば
 明らかに怪しい。
 誰もいない砂浜。いちいち鍵をかけるホテル。
 愛想はいいのにのび太たちを見張るような人形たちの態度。
 敵か味方か分からなくて怖い。
うさぎ「真夜中にテレビで宣伝してるんですぅ~」
のび太「それじゃ誰も見ないじゃない」
 …真夜中のテレビも平気で見るような大人になっちゃったな俺。


 この世界を不思議に思いながらもスキー場へ。
 楽にスキーが出来る道具を出してというのび太に
ドラえもん「道具にばかり頼ってると何もできない人間になるよ」
 分かりやすい伏線である。
 そしてこの時点で映画開始から20分……。

 なんとこんなところでドラえもんが脱落する。
 敵に拉致されてしまうのである。
 ドラえもん映画でドラえもんが消える。
 チート封じの究極の一手をここに打ったかという感じである。
 まあこれも「一度はやっておきたい」ネタ。
 14作目なのだからいいだろう。
 ドラえもんが消えた途端に何もできなくなり死に掛けるのび太も
 本作の世界観を説明してくれている。


 のび太が1人になった途端、ブリキンホテルはその不気味さを
 一気に見せつけてくる。
 まだドラえもんを攻撃したのがだれなのか視聴者には分からない状態である。
 怖い。
 やはりドラえもん映画は恐怖の扱いが抜群だ。
 のび太の場面では徹底して焦燥感が掻き立てられるが、
 ドラえもんパートはまだギャグっぽいのは
 藤子先生の子供への計らいだろう。

 仲間たちとホテルに戻ると、ホテルが爆撃される。
 一応ブリキのおもちゃとはいえ、ガチの戦闘機相手に
 1人で立ち向かうジャイアン。
 ドラえもんがいないことで4人のメンバーが目立つのは嬉しい。
 ドラえもんがさらわれたことが分かり、
 とうとう本作のゲストキャラであるサピオが現れる。
 助けを求める方法がちょっと強引過ぎるけど、
「助けて」と言われたら何も考えず「分かった」と答える
 ジャイアンがカッコいいから何も言わないでおこう。
 劇場版のジャイアンはカッコ良ければいいのだ。


 サピオの口から、すべてがロボットに任せられる世界が語られる。
 これは現代文明の考えるユートピアであるとともに
 その危険性も分かりやすい世界観である。
 本映画の公開された当時より、さらにこの世界観に
 現実社会が近づいているのは皮肉というべきか。
 敵のラスボスの名前は「ナポギストラー」。
 分かりやすいくらいヒトラーである。
 あとナポレオンかな?
 皇帝陛下の声は「紅の豚」で有名な森山周一郎さんが担当している。
 いかにも悪役っぽいいい声である。


 敵を追い詰めるべく二手に分かれての戦いが始まる。
 のび太はラビリンスへ。ジャイアンたち敵のもとへ。
 この時視点がドラえもんに移るのだが、
 ドラえもんがのび太を頼りにするという非常に珍しい演出がなされる。
 劇場版通じてここだけじゃないかこの演出。

 敵の都市に潜り込んだジャイアンたちは、
 今度はスネ夫の機転によって核心に近づく。
 ジャイアンとスネ夫がいい具合に活躍している。
 この2人はこのあとしばらくの間、不遇の時代が続くので、
 ここら辺ののび太からも解放された扱いは嬉しいところである。

 のび太たちもラビリンス制覇は無理だったものの、
 ドラえもんのもとへたどり着くすべは閃いて、ドラえもんを助けに。


 ドラえもんさえよみがえってしまえばこっちのものである。
 このチート復活による気持ちよさは劇場版でも屈指の展開。
 ご都合主義?
 なんでもいいんだよ。
 このとき、劇開始からだいたい80分。
 つまりドラえもんが囚われて1時間といったところである。
 いい演出だ。
 ドラえもんがよみがえったとたんにのび太が
 また怠け者に戻ったのも「らしい」。

 ドラえもんにかかれば迷路なんて子供だまし同然。
 あっという間に中央ホールへ。
 サピオの父が残してくれたウイルスを手に入れ、
 出るときは通り抜けフープ。
 ……迷路もへったくれもねえな。
 ナポギストラーことナポちゃんも、ドラえもんにかかれば雑魚そのもの。
 ここら辺はもうちょっと頑張ってほしかったかな……。


「ブリキのラビリンス」とはいうものの、
 ラビリンスそのものよりドラえもんを失ったのび太の
 迷いとがんばりが光る一作だった。


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