映画感想 ドラえもん のび太の雲の王国

ネタバレ注意!!!






 大長編ドラえもん中、おそらく最たる異色作。
 強烈な環境問題提起。
 敵は「人間の感性」。
 ガチで滅ぶ世界。
 子供映画とは思えない練られた伏線。
 そして逆転の切り札は、テレビ版を見てないと分からない。
 きー坊によるもの。と、
 これは映画でやるべきなのかって感じの一作。


 冒頭からもうおかしい。
 ノアの箱舟伝説に似た神の啓示があり、
 その島がガチで沈む。
 冒頭5分間を共にしたじいさんたち一家は
 その後しばらく生死が分からなくて妙に怖い。

 そして沈みゆく島を背景に、
 いつもの「ドラえもーん」の声とともにOPへ。
 ここまでのび太は一切登場しない。
 なぜドラえもんを呼んだのかも分からない。
 まあお約束といえばそうなんだけど。


 その後はのび太たちの日常生活。
 ちょっと短いが雲の成り立ちの解説。
 今回は先生が教えてくれる。
 だからこのシーンは出木杉君に譲ってくれよ~。

 ここからが本作一番の魅力。「雲の王国」作り。
 日本誕生に並ぶ、秘密基地づくりの名シーンである。
 雲と握って固めていくという感覚が本当に楽しい。
 すぐにのび太が遊び始めてしまい、
 装置が全自動すぎて勝手に王国が出来るモードになるのが寂しいが、
 にしても魅力は魅力。


 無差別攻撃を仕掛けてきたり、
 密猟者たちを捕獲する謎の雲の存在も明らかになり
 絶妙な緊張感の中、
 雲の王国は完成していく。
 入道雲から出ている滝がいい感じだ。
 このシーンで流れる本作のテーマ曲「雲が行くのは」は、
 宇宙小戦争の「少年期」、日本誕生の「時の旅人」と並ぶ名曲だと思う。

 そして冒頭出てきた少年がようやく再登場。
 同時に彼を追ってきたらしい謎の男女が登場。
 一気に不穏な空気が漂う。
 あとどうでもいいがこのシーン。大株主だからと調子の乗ったスネ夫が
 ジャイアンにフルボッコされるシーン。
 子供のころはギャグとして見ていられたけど、
 大人になって見ると妙に皮肉を感じてしまう。


 そして少年を探しに、「もう一つの雲の王国」こと「天上世界」へ突入。
 さっそく天上人パルパルと仲良くなる。

 この天上人だが、いきなりどこかいびつさを見せてくる。
 肉食動物であるハイエナらしき動物に対し
「狩りをやめなさい。エサはあげてるでしょう」とか言い出す。
 これに違和感を感じれば、後半のとんでもない流れの理由も分かるだろう。
 同時に天上人たちはこちらを訝しんでおり、
 また寝所に閉じ込めたり。
 のちにはプレゼントと称して発信器つきの指輪を渡したり、
 傲慢さが端々に見える。
「竜の騎士」に似ているが、
 あちらはあくまで「真の敵が別にいる」ことへの伏線だったのに対し
 こちらは最後まで仲良くなれそうにない。


 こうして天上世界からの逃避行が始まる。
天上人「地上人はどうしていつも逃げたがるんだ」。
ジャイアン「お前らが閉じ込めるからだろ」
天上人「危険な動物がいるからあなたたちのためよ」(と言いながら雷で撃墜)
 なんなんだこいつらは。
 さらに雷の一撃でドラえもんが故障してしまう。
 ドラえもんのチート封じが、ドラえもんが壊れるという形で成される。
 下手するとシリーズ1絶望的なシーンかも。


 そしてここからが本作の異質な点。
 過去、テレビシリーズに出てきたキャラが出てくる。
 小人のロップル君が現れるのである。
 誰だこいつは?
 きー坊は知ってるけどこいつは知らない。
 一応回想シーンもあるけど、
 映画版は映画版として完結してほしいところである。

 ともあれ、冒頭の家族が現れる。
 天上人を「神」としつつも、
 その傲慢さが適度に触れられ、敵か味方かわからない。
 同時に地上を大雨で洗い流す「ノア計画」が明かされる。
 そのための実験も済んでいるという。

 子供ならここで天上人=善と思うところだろうが、
 ちょっと大人になってから見れば
 冒頭、じいさんたちの島を洗い流したのは
 その実験のためだったと気づく。
 環境を守るための実験に、
 環境を全く汚さず生きてた家族を実験台にして
 下手したら殺しかけている。
 やっぱり天上人ってどこかおかしいと思う。


 並行して、脱出したのび太は雲の王国にたどり着く。
 たどり着けた原因は「匂い」。
 伏線が効いていて面白い。
 だが同時に、洪水に沈んだ世界を見せられることに。
 ……このシーン、もうテレビじゃやれないだろうなあ。
 のび太の
「どうするもこうするも、世界の終わりだよぉ」のセリフが
 胸に響く。


 ノア計画の発動はボタンたった1つで起こるという。
 同時にドラえもんの持つ大砲もボタン1つ。
「海底鬼岩城」でもあった「ボタン1つで世界が滅ぶ」、
 藤子先生らしい恐怖世界が描かれている。
スネ夫「使うつもりないものを出すなよ」
 という台詞が実に藤子先生らしい。
 同時に密猟者たちが再登場である。
 悪役を押し付けられた彼らはちょっと可愛そうだが、
 まあ映画だし仕方あるまい。

 傲慢に迫る天上人には脅しも必要。
 というリアルな話と、
 といってそれはできない。というドラえもんらしい内情が
 ないまぜになった状態で、事態は最終局面へ。


 最後の決着は、ドラえもんがこれまで
 微塵も見せていなかった
「頭突きが強い」という謎の特技によって果たされる。
 消えゆく雲の王国。
 密猟者たちはなんとか天井人たちが助けてくれたっぽい。
 ドラえもんはガチで殺す気でいってたよな…。


 最後の裁判。
 謎の超能力を会得したきー坊が現れる。
 これはさすがに強引では?
 もっといえばのび太は同学年のままなのに
 きー坊が大人になっているのは……んん……?


 序盤がクライマックスな異色作。といったところ。


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