映画感想 ドラえもん のび太と鉄人兵団

ネタバレ注意!!








 大長編の中でもかなりの人気作。
 というか人気のある魅力的なゲスト、リルルが登場する。

 冒頭。空高くから町を見下ろすような構図が
 数十秒ほど続く。
 これは最後の伏線となっており映像的に美しい。
「恐竜」でもそうだったが、
 映画版でもテレビと同じようなカットの続くドラえもんだけに、
 こうした映像的に良いシーンが出るのはいい感じである。

 ここから切り替わってのラジコンロボット「ミクラン」の行進も
 それまでの静かな空気から切り替わってよい迫力。
 掴みはOKだ。

 リルルを中心とした、どこか奇妙な世界観が本作の魅力。
 誰もいない町を好きなように闊歩する自由感。
 そんな街を巨大兵器で薙ぎ払う爽快感。
 そして謎の少女リルルが、のび太にだけ優しいという背徳感。
 全編を通して
 なんだかいけないことをしてるような不思議な快感がある。

 
 そしてそんなふわふわした気分のうちに話は進む。
 そもそもザンダクロスの正体が分からないうえ、
 呼び寄せているボウリング玉みたいなブレインが
 どうみても怪しく、嫌にも緊張感が高まる。
 そんなところでザンダクロスの超攻撃力。
 どう考えても最後はこれが敵になりそうで、怖い。

 見たこともない合金でできた
 どこからともなく現れる巨大ロボット。
 こんなもんを組み立てる時点でドラえもんは
 警戒心が足りな過ぎると思うのだが、そこはまあいいか。


 そして開始から20分。いよいよリルルの出番である。
 可愛いけど目つきがおかしい彼女。
 どう見ても敵なのは分かるが、やっぱり可愛いし、
「あなただけは特別扱いする」というセリフもあって
 どうにも憎めないという状況が歯がゆい。

 リルルはなんとか止めたものの、すでに敵の
 鉄人兵団本体が地球へ向かっていることが分かる。
 のび太たちは最初の鉄人、ザンダクロスを
 改造という(結構エグい方法で)仲間に加え、敵の拠点を制圧。
 さらには兵団の総長との本格的な戦いに移る。


 ここから敵のビジュアルが一気に変わり、
 緊張感が跳ねあがる。
 どう見てもガンダムでカッコいいザンダクロス。
 可愛いリルルに比べ、
 敵長は昆虫っぽくて気持ち悪いし、
 敵兵士もカラスっぽかったり無機質だったり、
 うしろからいきなりきたり、
 無力なしずかちゃんにとびかかったりととにかく怖い。

 とくに敵兵長のデザインは秀逸。
 ほんとにキモい。
 藤子先生といえば、個人的に日本の漫画家の中では
 鳥山明と並ぶ「愛嬌のある敵キャラ」デザインの達人だが、
 こいつは全く愛嬌がなくて嫌いだ。
 さっさと死んで欲しい。

 今回「魅力的な敵」はリルルが担当しているので、
 こいつはただの憎まれ役。
 そんな設定的に完璧なデザインだと思う。


 同時にリルルを修理することで仲間に引き込む。
 ここの演出はちょっとずるく、
 リルルが美少女であることを最大級に利用している。
 可愛い女の子がおっぱい出して寝てれば
 そりゃこれまでのヘイトも吹っ飛ぶってもの。
 ちょっとハリウッド的かな。

 さらに緊張感のあった戦闘の流れが小休止し、
 誰もいないスーパーで好き勝手に買い物したり、
 バーベキューしたりと気が休まる。

 そしてここで、ロボットリルルと人間しずかちゃんの仲たがい。
 ちょっとだけ藤子F先生が、「子供たちのための漫画家」でなく
「少し不思議作家」の皮肉屋な顔を出す。

 しずかちゃんがナチュラルにロボを奴隷に思っているのに対し、
 リルルも全く同じことを言いかえす。
 見ているこちら、人間側としては、
 しずかちゃんに同意しがちだが、
 それはつまり今回の敵である鉄人軍団と
 しずかちゃん=観客がまったく同じ思考をしているということになる。
 中学生くらいになるとニヤリとする場面だろう。
 いやおっぱいのことではなく。


 いよいよ最終決戦。
 鏡面世界に敵をおびき出して、全面戦争を仕掛ける。
 この鏡面世界に持ってくる流れは
「池1つを入口に変える」というもの。
 すごい広さにはなっているが、
 さすがにちょっと強引かな……。

 さらには敵の総攻撃開始。
 ……この時点で現実世界に戻ってこの池を
 なんかの道具でふさいでしまえば……とかいうのは野暮ってもの。
 鏡面世界であることをリルルに知らされればマズいため
 逃げたリルルが敵に返り咲くのだが、
 ここでついにリルルがこちらに心を開く。

 そして鉄人兵団との最終決戦とともに、
 リルルとしずかちゃん、そして全く役に立たなかったゲストキャラ、
 ミクランの活躍で、最後の反撃が始まる。
「タイムマシンによる原因の除去」はちょっとずるいけど、
「大魔境」と同じく、
 タイムマシンがあるからにはやっておきたいネタ。
 1回目だしいいだろう。

 こうしてリルルの犠牲とともに戦いは終了する。
 途中しずかちゃんとの言い合いにもあったとおり、
 ロボと人間は鏡合わせの存在である。
 そんなロボは人間のために
 自分たちが消滅するという選択を取ったわけだが、
 人間はそんなこと露とも考えない……。
 そうして転生したリルルは「天使」になったわけだが、
 人間は、さて。


 冒頭と絡むラストシーンは、やや急ぎ足なものの、
 感動的なそれではなくどこか爽快。
 冒頭と同じ美しい映像美もあって、爽やかな終わり方となる。


 細かく見れば突っ込みどころは多いけど、
 リルル1人ですべてが許される作品である。





コメント

 

コメント

 
管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

Powered by FC2 Blog

FC2Ad


Copyright © 雨が降っても空を見る All Rights Reserved.